Götz et al. (2021)

2月 22, 2021 コメントを残す

Götz, F. M., Gvirtz, A., Galinsky, A. D., & Jachimowicz, J. M. (2021). How personality and policy predict pandemic behavior: Understanding sheltering-in-place in 55 countries at the onset of COVID-19. American Psychologist, 76, 39-49. doi: 10.1037/amp0000740

ちょうど去年の今頃,ここミシガンでも新型コロナに関する報道が増えていて,3月にイスラエルで開かれるはずだった学会で講演をすることが決まっていたので,キャンセルになったらショックだなと悩んでいたのを思い出す.あれから早一年.今なら学会をオンラインでやるという選択肢があるけれど,当時は直前だったこともあり,結局,学会自体,取りやめになった.私の授業もラボも3月16日からすべてオンラインになった.ただ時差さえ気を付ければ,勉強会がどの国で開かれていようとも簡単に参加できるようになり,これまでメールだけだった研究者ともZoomやGoogle Meetで直接話せる回数が増えた.この1年いろいろなことがあったが,PTGで言えば,これまでの研究成果をまとめた本を日本語で書いたのが大きい(今,出版社で校正中).その本を書き終わった途端,日本語でモノを書くのが週に一回になってしまったので,今日は久しぶりにブログを書くことで頭の体操をしたい.新型コロナの論文をレビューする.

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YouTubeビデオ

1月 27, 2019 コメントは受け付けていません

英語と日本語でPTGを紹介するビデオを作りました.これから時々,更新していく予定です.どうぞ以下のリンクをご覧ください.

Japanese video

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カテゴリー:Media

Kunz et al. (2019)

1月 25, 2019 コメントは受け付けていません

Kunz, S., Joseph, S., Geyh, S., & Peter, C. (2019). Perceived posttraumatic growth and depreciation after spinal cord injury: Actual or illusory? Health Psychology, 38, 53-62. doi: 10.1037/hea0000676

2019年がはじまってあと少しで一か月になる.外の気温はマイナス12度.一昨日はマイナス20度まで下がった.それでもラボのメンバーは朝イチで大学に来る.あと一カ月くらいで去年からやってきた研究の一つが終わりそうなので,それをこの次どう発展させるか,研究デザインを決めようとしているからだ.はじまってしまうとまたしばらく変更できないので,今が大事だ.で,その内容は「本物のPTG」と「幻想のPTG」をどう見極めるか,あるいは一般の人はその違いをどうとらえているのか,ということに関係する.PTG研究を長くやってきているイギリスのノッティンガム大学のDr. Stephen Josephがスイスの研究者と共同研究してこのテーマで論文を発表したのでそれをレビューする.

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Tedeschi & Blevins (2015)

5月 18, 2018 コメントは受け付けていません

Tedeschi, R. G., & Blevins, C. L. (2015). From mindfulness to meaning: Implications for the theory of posttraumatic growth. Psychological Inquiry, 26, 373-376. doi: 10.1080/1047840X.2015.1075354

意味などない,悪夢としか思えないような出来事の中に何らかの意味を見出せることもPTGの一つだ,と考えてきた.でもはたしてそうだろうか.「多くの研究者は,怒りと暴力と復讐が鬱状態を解消する薬になるらしいことに注目している.憎しみと復讐によって意味と目的があたえられ,鬱病による無力感と苦痛を撥ね返すのである.チェチェン紛争で死傷した戦友の復讐を誓ったロシア兵には,まぎれもなくこの作用がはたらいていた.報復行為は世界中の文化圏で報告されている.中略.考えられる理由の一つは,暴力は興奮をかきたて,力をあたえ,鬱の苦しみから強制的に気持ちをそらせるはたらきがあるのかもしれないということだ.それがほんとうなら,背筋が寒くなるような可能性が考えられる.若者のあいだで鬱病と自殺の率が上昇しているとすれば,他者への憎悪と暴力もそれにつれて増加するのではないか.それは,意味も目的もなさそうな世界で,粗暴な若者が鬱病をみずから治療しようとする行為なのかもしれない(ラッシュ・W・ドージアJr著.桃井緑美子訳「人はなぜ『憎む』のか」河出書房新社.P.130)」. 続きを読む…

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Johnson et al. (2017)

11月 25, 2017 コメントを残す

Johnson, J., Panagioti, M., Bass, J., Ramsey, L., & Harrison, R. (2017). Resilience to emotional distress in response to failure, error or mistakes: A systematic review. Clinical Psychology Review, 52, 19-42. doi: 10.1016/j.cpr.2016.11.007

心的外傷後成長のプロセスを見る研究では,出来事が予期せず襲い掛かってくるようなパターンが多い.心の準備もままならない間にさまざまなことが降りかかってきて,心の整理がつかない.なすすべもなく,どん底に突き落とされてそこからまたどう生きるか.そこでの葛藤や心のもがきとPTGは親和性が高い.けれども,なすすべがいくらでもあったのに,自分にできることがたくさんあったのに,それをしなかったために出来事が起きてしまった時はどう考えたら良いのだろう.どん底に突き落とされたのではなく,自業自得の場合.いくらでも防げたのに...3年くらい前から私の研究室ではそういう状況でのPTGも研究してきていて,やっとデータが揃い始めた.今日はそのデータをまとめる上で参考になりそうな論文をレビューしたい. 続きを読む…

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宅 (2017) レジリエンスとPTG

9月 11, 2017 コメントを残す

2017年9月に金剛出版から発行された「臨床心理学」の雑誌(17巻,5号)でレジリエンスについての特集が組まれました.私も,「レジリエンスとPTG(心的外傷後成長)」というタイトルで寄稿しました(P.654-658).

「レジリエンス―それは大変つらい状況に陥ったとき,どんどん深みにはまってゆくのではなく,持てるものをなるべくうまく使って,そこから抜け出すことができるイメージだ.ただ抜け出すだけではなく,その経験を糧にできる,そういった強さやしなやかさも感じられる(中略).PTG(Post-traumatic Growth)-それは大変つらい状況に陥ったとき,抜け出したくても抜け出せず,解決するすべもなく,ただもがくなかで,表面的にはほとんど何も変わっていない.よりうまく適応できるようになったとは限らず,症状が必ずしも軽くなったわけでもないけれど,一人の人間としては成長しているとしか表現のしようがない変化を経験しているイメージだ(中略).本稿では,両者の関連を論じる(「臨床心理学」第17巻第5号,P.654,「I.はじめに」より抜粋). 続きを読む…

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Weststrate & Glück (2017)

8月 27, 2017 コメントを残す

Weststrate, N. M., & Glück, J. (2017). Hard-earned wisdom: Exploratory processing of difficult life experience is positively associated with wisdom. Developmental Psychology, 53, 800-814. doi: 10.1037/dev0000286

PTGのモデルに含まれている構成概念で,これまで深く研究対象にしてこなかったものに「Wisdom(英知,知恵)」がある.英知の備わっている人のイメージとしては,杖のついたおひげのおじいさん.アルプスの少女ハイジに出てくるクララのおばあさん.穏やかで,動揺せず,先を見通していて,包み込むようなイメージ.でも必ずしも年をとった人だとは限らず,(具体的な例は思いつかないけれど)誰かがWisdomを発揮している場面にでくわすと,「うわあ...さすがだな」と思い,自分もそういう解決方法とか,咄嗟の行動とか,言葉のチョイスとかができたらいいのにな,とか思ったりする.また,自分で何かを決めた後で,もう一度よく考えてみたらそうするんじゃなかった,と悶々としたりして,せっかく「三人寄れば文殊の知恵」と言うことわざがあるんだから,色々な人の意見を聞けばよかったなと思うこともある.「健康(well-being)」や「幸せ(happiness)」,「満足(satisfaction)」などの軸とは,また別の「賢さ,英知(Wisdom)」の軸.私の大学はあと一週間で入学式.新学期が始まり,うちの研究室にも新しいメンバーが加わる.彼らとの新しいプロジェクトを考えるにあたってWisdomの研究はどういう手法を取るのか勉強しておきたくて夏休みの間に読んでいた論文がこれだ. 続きを読む…

Johnson et al. (2009)

6月 19, 2017 コメントは受け付けていません

Johnson, R. J., Canetti, D., Palmieri, P. A., Galea, S., Varley, J., & Hobfoll, S. E. (2009). A prospective study of risk and resilience factors associated with posttraumatic stress symptoms and depression symptoms among Jews and Arabs exposed to repeated acts of terrorism in Israel. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy, 1, 291-311. doi: 10.1037/a0017586

ああいうことがあったけれど,「私はお父さんとお母さんの子どもで本当によかった」,「日本人に生まれて心底よかった」,「この先生でよかった」などと感じるとき,その「よかった」はどういう意味だろうか.PTGで言うところの『人生に対する感謝』のようなものだととらえてよいのだろうか.では,こういうことがあって,「私はああいうお父さんとお母さんの子どもじゃなくてよかった」,「私はxx人に生まれなくて心底よかった」,「あっちの先生じゃなくてよかった」と感じたら,その「よかった」はどういう意味になるのだろうか.自分が所属する集団を好ましく認知し,外集団を批判したり排斥したりするそれを,エスノセントリズムの観点から検討し,PTGはむしろそれを招く,したがってPTGは有害な場合がある,と結論づけた研究が今日レビューする論文だ.多様性を認め,(自国から見た)歴史的背景を学び,さまざまな差別があることを知った上で,国全体に影響を及ぼすような大きな自然災害の後などに,「それでもやはり,日本に生まれて本当によかった」,「これからの日本の未来は日本人が決めるべき」,「外国人も日本に住んでいるなら,郷に入れば郷に従えで日本のルールに従うべきで,嫌なら出て行けばいい」と感じたら,それはマズイのだろうか.「ヘイト」にさえつながらなければ,意味云々は人それぞれで良いのだから,追究する必要はないのだろうか.Jonathan Haidtの『The righteous mind: Why good people are divided by politics and religion 』,もう一度,アメリカに帰ったら読んでみようかな. 続きを読む…

Dekel, Mandl, & Solomon (2013)

5月 4, 2017 コメントは受け付けていません

Dekel, S., Mandl, C., & Solomon, Z. (2013). Is the Holocaust implicated in posttraumatic growth in second-generation Holocaust survivors? A prospective study. Journal of Traumatic Stress, 26, 530-533. doi: 10.1002/jts.21836

私が所属しているOakland Universityの心理学部は進化心理学がものすごく盛んだ.うちの大学院に応募してくる学生の多くが進化心理学を学びたくて来る.そのため,どれだけ一人ひとりの院生が違うテーマを選んだとしても,その背後に,私達が生まれてくる以前の人類の歴史とか,人間以外の生き物の進化とかが必ずと言っていいほど入ってくる.私は自分自身がそういう授業を受けたことがないこともあり,勉強がなかなか追いつかない.で,そんな中から湧いてくる疑問.人は自分の先祖が経験したトラウマにどう影響されているのだろうか.トラウマの世代間伝達.このテーマに関しては,PTSDを中心としたネガティブな影響に焦点を当てて,かなり研究がなされてきているが,果たしてPTGにはどのような影響があるのだろうか.イスラエルの研究者ソロモンらが,その可能性を検討しているので,今日はそれをレビューしたい.結論から言うと,第二世代(つまり親がトラウマサバイバー)であるという事実はPTGに負の効果,つまりPTGを抑制するようだ. 続きを読む…

Fleeson (2014)

3月 4, 2017 コメントは受け付けていません

Fleeson, W. (2014). Four ways of (not) being real and whether they are essential for post-traumatic growth. European Journal of Personality, 28, 336-337. doi: 10.1002/per.1970

去年のサバティカルをきっかけに研究テーマを広げたので,勉強することがたくさんある.それぞれのテーマの背景や歴史を知らないこともあって,論文を読むのにも時間がかかる.とは言え,新PTGハンドブックの執筆は続いていて,今週は「PTGを本物―幻と分類すること」についてどう考えるか,という章を執筆している.来週からは臨床実践の章に入る.ちょうど昨日,うちの大学では大学院生の面接があったが,私のラボに応募してくる学生の多くがこの「本物のPTGと幻のPTG」というテーマを修論ないしは博論にしたいと考え,さまざまなアイデアを持ち込んでくる(ちなみにアメリカでは大学ごとの院試はなくて,GREというテストがあり,その結果とGPAとカバーレターと推薦書等を総合して決める).さて,院生のみならず多くの研究者がこの部分をなんとか解決しようとここ数年,躍起になっているが,「別に解決しなくてもいい場合もあるんじゃない?」という論考があったのを思い出したので,それをレビューしたい. 続きを読む…

「PTGの可能性と課題」(2016)

10月 26, 2016 コメントは受け付けていません

この11月,27名の著者からなる「PTGの可能性と課題」が金子書房から出版されます.ptg

―「はじめに」から一部抜粋―

本書は,「ポストトラウマティック・グロウス(心的外傷後成長)」,すなわち非常につらい出来事をきっかけとした人間としての成長という現象,およびその近接領域のテーマに関して,これまでどのような研究がなされてきたか,そして臨床実践がどう積み上げられてきたか,今後の可能性と課題を一冊に集約したものである.そのテーマは,ポストトラウマティック・グロウス(Posttraumatic Growth)の頭文字を取って,PTGと呼ばれている.PTGとは,心的外傷を引き起こすような大変つらい出来事や突然の不幸な出来事など,危機的な状況に直面した人々が,さまざまなストレスを経験しつつも,それと向き合う結果生じる人間としての成長を表す.」 続きを読む…

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Tedeschi & Calhoun (2008)

10月 16, 2016 コメントは受け付けていません

Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2008). Beyond the concept of recovery: Growth and the experience of loss. Death Studies, 32, 27-39. doi: 10.1080/07481180701741251

Tedeschiらと新しいPTGのハンドブックを出版するため,今,執筆活動中で,あれこれいろいろ考える.前回のハンドブックが出版されたとき,UNC Charlotteにいたので,Richからこの水色の本をもらって感激したことを覚えている.あれが2006年だったので,あれから10年.ハンドブックは,その後2014年に,日本の先生方と訳して医学書院から出版させていただいたが,もう随分昔という感じがする.で,知見が古くなりつつあるので,今回,新しいハンドブックを書こうということになった.それを聞いたのは去年の夏のAPAの時で,(えー本当に書くの?私も書くの?)と半信半疑だったけれど,皆で話しているとアイデアはどんどんわいてきた.特に今回は,前回のように,各章をそれぞれの担当者が独立に書くのではなく,最初から最後まで皆で書くというスタイルだ.皆というのは,私を含め4名(Rich Tedeschi, Lawrence Calhoun, そしてJane Shakespeare-Finch)で,私がトップバッターになって,まず一章書き,二番手であるJaneがいろいろ追加して,三番手であるRichにつながり,最後にアンカーであるLawrenceが仕上げ,また私に戻ってきて内容を確認して,Janeも納得できるか確認して,という段取りなので,私は全くの白紙に書きたいことを自由に書けてとてもありがたい.しかも英語で本を書くというのはこれがはじめてなので,学術論文のように制限もないなか,言いたいことをどんどん盛り込めて嬉しい.で,今,書いている章で,「PTGと回復」について論じたいと思っているので,そのために読んでいる論文の中から一本レビューしたいと思う.この論文はデータを分析しているわけではないが,DSM5が出る5年前にRichらが自分達の臨床経験をもとに,考えをこのようにまとめていたことを知るのは興味深い. 続きを読む…

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DeViva et al. (2016)

8月 14, 2016 コメントは受け付けていません

DeViva, J. C., Sheerin, C. M., Southwick, S. M., Roy, A. M., Pietrzak, R. H., & Harpaz-Rotem, I. (2016). Correlates of VA mental health treatment utilization among OEF/OIF/OND veterans: Resilience, stigma, social support, personality, and beliefs about treatment. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy, 8, 310-318. doi: 10.1037/tra0000075

8ヶ月に及ぶ日本でのサバティカルが終わった.その最後に,次につながる興味深い論文をみつけたので紹介したい.この論文では,「PTSD症状などが出ていないかスクリーニング検査をうけた結果,精神的健康に問題があるから,クリニック等の援助機関にリファーされた退役軍人」を対象に,彼らがリファーされた後,通院が継続するかどうかを検討している.研究者としては,受診につながり,治療施設が利用されることが望ましいわけだから,「実際の通院回数」や「心理療法と薬物療法の両方を受けたか」などを結果変数として,それに影響を及ぼす要因を検討している.その要因の中にPTGやレジリエンス,パーソナリティ,ソーシャルサポートなどが含まれている.そういった要因を調査した半年後に,調査協力者の治療記録にアクセスできるというのは,医療機関に所属している研究者だからこそのメリットであるかもしれないが,それにアクセスできてしまうからこそ,結果変数が「治療を受けたかどうか」というわかりやすいものになってしまい,それは(私の目からみると)デメリットである. 続きを読む…

Baker et al. (2008)

4月 14, 2016 コメントは受け付けていません

Baker, J. M., Kelly, C., Calhoun, L. G., Cann, A., & Tedeschi, R. G. (2008). An examination of posttraumatic growth and posttraumatic depreciation: Two exploratory studies. Journal of Loss and Trauma, 13, 450-465. doi: 10.1080/15325020802171367

今日は少し古めの論文をレビューしたい.それにしても,2008年の論文を「古め」と言わざるを得ないくらい,論文が日々怒涛のように出版されている.投稿先となるジャーナルの数が増え,研究者(というか論文を投稿する人)の数が増え,とにかくアカデミックな場面で数が重視され,書いて書いて書きまくれといわんばかりだ.数日前,あるジャーナルに投稿していた論文の査読結果がかえってきたが,そこに添付されていたレビュアーからのコメント:「引用文献に記載されている50本の論文のうち,過去5年(2011年からin press)に出版されたものが10本しかない.50本の論文のうち,2000年から2010年のものが約30本,1990年代のものが約10本と,知見が非常に古いと言わざるを得ない.現在の知見を反映させるように,引用文献のリストを修正するように」というものだった.なので,私達の研究グループは今リストの見直しに追われている.そんななか,今日はあえて2008年の論文をレビューしたい.というのも,今,これが結構注目を浴びているからだ. 続きを読む…

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Lehav, Solomon, & Levin (in press)

3月 8, 2016 コメントは受け付けていません

Lehav, Y., Solomon, Z., & Levin, Y. (in press). Posttraumatic growth and perceived health: The role of posttraumatic stress symptoms. American Journal of Orthopsychiatry. doi: 10.1037/ort0000155 (Advance online publication)

イスラエルのトラウマ研究者,Solomon博士と彼女の研究グループが発表した論文をレビューする.オンライン版がこの2月に出たばかりの最新の論文だ.この論文の目的は,PTGの二面性を身体的健康との絡みで検討しようという点にある.PTGの二面性とは:

  1. 本当の本当にポジティブな方向に人間性が変わるという意味での真の人格的成長という側面と,
  2. 本当は何も変わっていないのに防衛反応としてそう思い込んでいるだけであり,長期的に見るとむしろ不適応的な,幻の成長という側面

である.この二面性に関する議論がはじまってもう10年以上が経過していて,PTGは何ぞやに答えがないように,幻のPTGは何ぞやにも答えは出ていない.なので,研究者それぞれがこの両者を操作的に定義して研究することになる.この二面性に関して,ソロモンらは,もしも,調査参加者本人が言っているように,本当の本当に(しつこいか?)成長しているのであれば,長期的にみてストレス反応は弱まり,身体は健康になっているはずであると仮説を立てる(ちなみに私はなぜこういう仮説が成立するのか納得できない).結論から言うとこの仮説は成り立たず,PTGを経験している人ほどむしろストレス反応が高く出るという結果を得て,彼女らはPTGの負の側面をあぶりだしたという結論(つらい戦争及びそこで夫が戦争捕虜になったという痛ましい出来事をきっかけに成長していると頭では思っていても身体は正直だ,つらさがひどくなっているではないか,という結論)でこの論文を閉じる. 続きを読む…

Peterson et al. (2008)

1月 29, 2016 コメントは受け付けていません

Peterson, C., Park, N., Pole, N., D’Andrea, W., & Seligman, M. E. P. (2008). Strengths of character and posttraumatic growth. Journal of Traumatic Stress, 21, 214-217. doi: 10.1002/jts.20332

今日はピーターソンとセリグマンらによる「Strengths of character(性格の強み,長所)」という概念とPTGの関連を検討した論文をレビューしたい.人が成長するといった時のその「成長」の具体的な内容には個人差があるが,その内容を大きく分類したときのカテゴリー(いわゆる5領域)は多くの国で観察されることが知られている.

  1. 人間としての強さ
  2. 他者との関係
  3. 新たな可能性
  4. 精神性的な変容
  5. 人生に対する感謝

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Ryff & Singer (2008)

12月 20, 2015 コメントは受け付けていません

Ryff, C. D., & Singer, B. H. (2008). Know thyself and become what you are: A eudaimonic approach to psychological well-being. Journal of Happiness Studies, 9, 13-39. doi: 10.1007/s10902-006-9019-0

4年に一度の国際心理学会議,ICP (International Congress of Psychology)が近づいてきた.最初にシンポジウムのお話をいただいたのは2013年の春だったので,当時は(おお!2016年の学会を今から計画するのか)とすごく先のことのように思っていた.けれどもいつのまにか時間はたっていよいよ来年の夏だ.私も共同研究者といくつか研究発表を企画している.そこで今回はこのICPのKeynote Speakerの一人であるCarol Ryffの論文をレビューしたいと思う.彼女の言う「心理的ウエルビーング(Eudaimonic well-being)」はレジリエンスやPTG研究ともなじみが深く,Stephen Josephなんかは,辛い出来事に引き続いて体験される心理的ウエルビーングがPTGだ(PTG = eudaimonic happiness following tragic life events)と言っているくらいだ.研究の歴史も含めてこのあたりの概念は皆似通ったところがある. 続きを読む…

Arpawong et al. (2015)

11月 29, 2015 コメントは受け付けていません

Arpawong, T. E., Sussman, S., Milam, J. E., Unger, J. B., Land, H., Sun P., & Rohrbach.  (2015). Post-traumatic growth, stressful life events, and relationships with substance use behaviors among alternative high school students: A prospective study. Psychology & Health, 30, 475-494. doi: 10.1080/08870446.2014.979171

私は今,大学生の飲酒とPTGに関連した論文を書いている.数年前にその研究計画を立てる際に参考にした南カリフォルニア大学のDr. Milamらの研究グループの最新の論文をレビューしたい.彼らは思春期・青年期のPTG及びHIV感染者のPTGに力を入れている研究グループだ.彼らの研究チームは予防医学・ポジティブ健康心理学を背景に,PTGの経験が問題行動の予防にどうつながるかという視点で研究を重ねてきている.この新しい論文では,薬物予防プログラムに参加した高校生を対象に,参加前(ベースライン)と参加2年後のフォローアップを比べ,PTGが薬物乱用や十代の飲酒を予防する効果があるか検討している.縦断研究で,統計的にベースラインをコントロールした上で,PTGが十代の薬物乱用及び飲酒の予防に効果があると示してくれているので,PTG研究者としては「グッド・ジョブ!サンキュー!」と言いたい論文だ. 続きを読む…

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Pat-Horenczyk et al. (2015)

10月 26, 2015 コメントは受け付けていません

Pat-Horenczyk, R., Perry, S., Hamama-Raz, Y., Ziv, Y., Schramm-Yavin, S., & Stemmer, S. M.  (2015). Posttraumatic growth in breast cancer survivors: Constructive and illusory aspects. Journal of Traumatic Stress, 28, 214-222. doi: 10.1002/jts.22014

PTGの二面性についての研究が盛んだ.PTGには裏の顔,つまりポジティブで良い意味の成長という側面だけではなく,逆に真実にしっかり向き合わない,幻想とも言うようなネガティブな側面があることを論文の中で指摘したのはドイツの研究者Maercker & Zoellner (2004)だ.2004年というともう10年以上前になる.その2004年の論文というのは「Psychological Inquiry」というジャーナルでPTGについての特集が組まれた年にあたる.そこには16ほどのPTGに関する論文が収録されていて,Tedeschi&CalhounのPTGモデルもそこで紹介されている.さて,この二面性は「Janus Face Model(ヤヌスの顔ー前向きと後ろ向きの顔を持つ神ーモデル)」として紹介されたが,それに対して研究者はその後さまざまな反応を示して,「いや,PTGは幻想なんかではない」とかたくなに信じてそれを証明しようとする論文もあれば,「少なくともPTGIで測定しているPTGはすべて幻想でしかない」とわりと極端な主張をしている論文もある.けれども多くの研究者は,まあPTGには両面あるでしょうという感じだ.私自身もその「両面あるでしょう」の立場だし,今日読んだこの論文もまた「両面あるでしょう」という感じだ.けれども彼らの研究の独創的な点は,PTGとコーピングを組み合わせて,PTGの二面性をあぶりだそうとしたところにある. 続きを読む…

McCormack, Hagger, & Joseph (2011)

9月 28, 2015 コメントは受け付けていません

McCormack, L., Hagger, M. S., & Joseph, S.  (2011). Vicarious growth in wives of Vietnam veterans: A phenomenological investigation into decades of “lived” experience. Journal of Humanistic Psychology, 51, 273-290. doi: 10.1177/0022167810377506

サバティカルで日本に行くことが正式に決まった.来年1月から8月のお盆明けまで早稲田大学にお世話になる.サバティカルの間は授業やその他の委員会活動(会議など)がないので,研究のみに没頭できる貴重な機会となる.そのため春先からずっと研究計画を練ってきた.この研究案の中で,今回はじめてパーソナリティのHEXACOモデルを取り入れることになった.そのメインの理由はHの要素(Honesty-Humility:正直さー謙遜さ)にある.PTG研究では,自分で自分を振り返って,成長したかどうかを自分なりに判断するという,いわゆる自己報告式のアプローチが主流だけれど,一部の研究者は,そういう自己報告ではなくて,本人の「その人となり」,つまりパーソナリティが根本的にいい方向に変わったかどうかでPTGを判断すべきだと主張している.例えば,自分さえ良ければいい,嘘をついても,人をだましても,自分がほしいものを手に入れることができれば問題ないという性格だった人が,ある出来事を経験したことによって大きく変わり,正直者となり,たとえ自分が損な役回りを引き受けることになったとしても人を利用するなんてことはないという性格に変わることが仮にあったとしたら,そこではじめてそれがPTGだろうという主張だ.でもここで難しいのは,どういう性格になったらPTGと呼べるかが人によって異なることだ.「正直な性格になる」ことがイコールPTGではない(と思う).そこで,できるだけいろんなPTG論文を読んで,それぞれの研究者がPTGをどうとらえているのか情報収集している.そんなときにこの論文を見つけた. 続きを読む…

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