初めての心理学英語論文(北大路書房)
学術雑誌のエディターの仕事をはじめて4年目。論文を読むのも書くのもずっと前から好きだったけれど、エディターになってからさらに好きになって、どはまり。ユーチューブやっている時間があったら論文の方がずっと楽しい。去年は一年間で450の論文が投稿されて全部読んでる。すっごいいい研究の成果がつまっている論文も、AIとか使って自分では書いてないでしょみたいな味気ない論文もどっちもおもしろい。査読をお願いするとか、論文を投稿してくる人からの質問とかいろいろな理由であっちこっちの研究者とやりとりするようになったけれど、論文が好きという点で話が合う人も増えてきた。で、今日もさんざんに論文をやってたけれど、夏休み中だから、オフィスの蜘蛛の巣とか掃除してたら、本棚に『初めての心理学英語論文:日米の著者からのアドバイス』(シュワーブ・シュワーブ・高橋雅治著)(北大路書房)の本があるのに気づいて読んでみた!そしたら「多くの学生は国際的な学者になりたいと思っている。読者の方々には、日本の心理学者になることだけではなく、国際的な心理学者になることも目標にして欲しいと思う」というところに波線が引いてあって懐かしさがこみ上げた!2003年、名古屋大学の院生時代に買ったらしい。

で、再読しておもしろいと思った点を何点か。
この本にはワープロで書いていた当時の話(修正する時に行ごとに紙を細く切って糊で貼る)とか、ファックスや郵便で論文を郵送していた頃の話、査読者のコメントが赤字で手書きで書かれていた頃の話とか、そういう懐かしい話も載っていて、それはそれで時代を感じるけれど、今でもまさにそのとおりという話の方が圧倒的に多い!例えば、論文で大事なのは「①誰でも改善の余地があること、②繰り返し書き直すことの必要性、③複数の読者のために書くということ、④最終的な結果ではなくコミュニケーション過程としての作文(P.4)」とか、「欧米の編集者の方が、裁定に関してより強い個人的権限を持っている(P.84)」とか。
あと特に心に残ったのは「欧米の編集者の裁定は解釈が難しいことがある。というのも欧米の編集者は再投稿するかどうかについての判断を著者にゆだねることがあるからである。この点では、日本の編集者とのやりとりの方がわかりやすい。日本人の裁定は決定的であることが多いのに対して、欧米の編集者は著者に選択の余地を与えるように思われる(P.85)」という部分。こうしてこの本で読むまで気づかなかったけれど、私も自分が投稿してきてくれた研究者にメールを書くとき、必ず「If you choose to revise…」(再投稿すると決めた場合には)と書くし、メールの最後にも「If you prefer not to make these changes, feel free to submit it somewhere else but let me know so I know you choose to withdraw」(もし査読者とか私が提案するような感じで論文を書き換えるのは、どうもイマイチ気がすすまなくて、今のままで自分の論文を出版したいようなら、他の学術誌に投稿してもらって全然OKです。でも投稿する前に私に知らせてください、そしたらこっちの学術誌への投稿は取り消しという手続きをしておきますから)みたいに書く。それが当たり前と思っていたけれど、この本を読んで、そういえば日本のスタイルはもうちょっと違う感じだったなと思いだした(日本で論文を出したことがほとんどないから自信がないけれど)。
ちなみにカバーレター、ほとんど意味ないとかも同意。
で最後に、なんとなんと見つけてしまった!「もう1つの良い練習法は、雑誌に載っている論文を直接書き写すことである。書いている間は英語を見ないようにして、記憶している部分をできるだけたくさん書いてみるのである。練習を積むにつれてしだいに長い語句や文章を記憶することができるようになる(P.108)」という文章を!てっきり私、自分でこの「写す」やリかた思いついたと思い込んでいたら、まさかこんなところに!失礼しました。
久しぶりに昔読んだ本をもう一度読むと再発見があっていいというのもよく聞く話だけれど痛感した。ではまた!
PTGハンドブック第2版
英語ですが、2018年に出したPTGハンドブックの第2版が出版間近です。リッチ・テデスキ先生を筆頭に、前回と同じくジェイン・シェイクスピアフィンチ先生、そして今回新たにブレット・モア先生にも加わっていただき4人で仕上げました。2018年以後に出た知見を足したり、コロナ禍におけるPTGの研究結果を付け加えたり、リッチらのボールダークレストにおけるPTGプログラムでの取り組みについてもさらに紹介したりしています。

39人の言の葉(杏林書院)
「39人の言の葉ーあの時、こころに響いたのは理由がある」を荒井弘和先生、武田大輔先生と一緒に杏林書院から出版しました。手に取ってもらえると嬉しいです!

人の知覚と行動の変化に関するハンドブック
2022年から編集してきた、人の知覚と行動の変化に関するハンドブックが(英語ですが)、いよいよ出版となりました。日本からは三枝高大先生、吉野 伸哉先生、小塩真司先生、飯村周平先生に書いていただきました!

Tipping Point-転換点の研究へ
2020年くらいから徐々に研究テーマをPTGから、心理的な転換点や変化が起きる時(Psychological Tipping Point – the Moment of Changes)に移してきて、ラボのメンバーも今ではほぼ全員がそちらの研究に移行しているので、2024年3月をからラボの名称もFF-TIP LABに変更しました。引き続きどうぞよろしくお願いします。
講演のご案内
2023年12/19と12/21に、こころの変容、及び、研究について講演しました。こういう機会をくださった東京医科歯科大学に感謝です。
続きを読む…Journal of Loss and Trauma
「Journal of Loss and Trauma」という学術雑誌の編集委員長を2023年1月から引き受けています。
その仕事内容は、投稿された論文を読んで、次のステップを決めることですが、この仕事は世界中の研究者と知り合えるし、自分がこれまで取り組んできた研究テーマ以外の論文も否応なく読むことになるので、ものすごくやりがいがあります。もう本当に引き受けてよかったと心から思います。
投稿された論文は、最初に出版社の方がフォーマットや必要事項がOKかどうかチェックしてくださるので、それをパスした論文だけが、私のところに回ってきます。なのでそれを読んで、さてどうしようかと次のステップを決めるわけです。この段階ではだれにも相談せず、自分ひとりで決めます。多くの学術雑誌には、私が引き受けている「Editor」だけでなく、「Associate Editor」がたくさんいます。なので、Editorは、わりとすぐAssociate Editorに回しちゃうんですが、私の場合、Associate Editorは一人しかいません。なので、私がすべて読んで判断しています(で、OKの論文をAssociate Editorに回しています)。
続きを読む…人生レシピ
NHKのEテレ、「明日も晴れ!人生レシピ」という番組でVTRにコメントさせていただきました.
エピソードの題名は「人生の苦難 その後を生きる」
放送は2022年11月25日金曜日午後8時
リンクはこちら:https://www.nhk.jp/p/jinsei-recipe/ts/9297GZL6PP/episode/te/DKRJ913Z41/
青年心理シンポ
日本青年心理学会第30回大会の「英語論文シンポジウム」に参加しました。
日時:12月11日(日)9:00〜11:00(大会2日目)
開催方法:オンライン(リアルタイム)
企画:日本青年心理学会国際研究交流委員会
私は自分自身の英語論文の執筆経験や、指導の工夫やコツについて話題提供しました。資料はこちらのリンクの真ん中あたりにパワーポイントとPDFをダウンロードできるようにしてあります。
論文執筆に使えるリソース
「ゲーム感覚で身につく論文執筆ー『今よりもっと論文を書く』と決めた研究者へ」という本を飯村周平先生,松井智子先生と風間書房から出版させていただいたので,それに対応するようなユーチューブビデオをアップしています.英語版はこちらです.また,論文執筆に役立ちそうなリソースは,このリンクに載せています.
そのリンクからワード文書でダウンロードできるファイルは以下の通りです(リンク先のファイル名はこれらの英語版になっています).
- APAにフォーマットした論文のサンプル
- 回帰分析用の表
- 因子分析用の表
- デモグラフィック変数をまとめるための表
- 階層重回帰分析用の表
- 二群別の相関係数の表
- 横型の表
- 構造モデル用の表
- 因子分析プラス相関の表
- 既に出版されている論文を投稿した時のワードのファイル(そして出版後のPDFのリンク)
ビデオ版:心理学の卒業研究ワークブック
ゲーム感覚で身につく論文執筆
「ゲーム感覚で身につく論文執筆ー『今よりもっと論文を書く』と決めた研究者へ」という本を,飯村周平先生,松井智子先生と一緒に書きました.三人で書いている間じゅう,私はとても楽しかったです.読む人にも楽しく読んでもらえたらいいなと思います.また感想などお聞かせください(メールアドレスは,taku@kanakotakuです)
目次は以下の通りです
続きを読む…講演会終了
- 講演:コロナ禍と心の成長ーPTG研究から考える(宅香菜子)
- 日時:2021年12月11日土曜日午前10時から12時
- 主催:室蘭工業大学 前田潤先生
- 来場(北海道大学 学術交流会館):https://ptgtakukanako20211211inperson.peatix.com/
- オンライン:https://ptgtakukanako20211211online.peatix.com/
- 講演内容:強いストレス症状を引き起こす,つらく苦しい出来事やトラウマをきっかけに,悩み,精神的なもがきを経験することで人間として成長する現象をPTG(Post Traumatic Growth:心的外傷後成長)と言います。本講演では,なぜ誰もがPTGを知っておくと良いのかその6つの理由,そしてPTGの何を知ってほしいのか6つの内容をまとめました。今後,臨床にいかすには具体的にどうすればよいか,研究にいかすにはどうしたいか,実際に自分なりにデータを取って,そういう試みをいくつかやってみて,また数年後にその結果を皆様にご報告したいと思っていますので,今後ともどうぞよろしくお願いします.
インタビュー記事
Vogue Japanの企画でPTGに関するインタビューにお答えしました.「トラウマからの人間的成長。ウイズコロナで注目されるPTGを知ろう」です.リンクはこちら:https://www.vogue.co.jp/beauty/article/mental-onayami
APA (2021)
今年2021年のアメリカ心理学会(APA: American Psychological Association)が8月12日から14日までオンラインで開催されます.そのメインステージのスピーカーの一人として,PTGに関するインタビューに答えました.
- PTGとは何ですか?人によって違うんですか?
- トラウマを経験した後成長に向かって踏み出す最初の一歩はどういうものですか?
- PTGを促進するためには専門家による援助が必要ですか?
- 自分自身ではPTGを経験するためにどんなことをしていますか?

Taku, K. (2021, August). Growing from our Traumatic Experiences. Invited interview for the Main Stage session, “The Science of Resilience – Bounce Back from Adversity”, at the 129th American Psychological Association (APA) Annual Convention, Online.
宅(2021)
昨年の春頃から執筆していた本が,風間書房様より,今月末に出版となりました.
単著は7年ぶりでしたので,PTG研究の成果はもちろんのこと,大学教育の魅力について思う存分書かせていただきました.
目次は以下の通りです.
続きを読む…Götz et al. (2021)
Götz, F. M., Gvirtz, A., Galinsky, A. D., & Jachimowicz, J. M. (2021). How personality and policy predict pandemic behavior: Understanding sheltering-in-place in 55 countries at the onset of COVID-19. American Psychologist, 76, 39-49. doi: 10.1037/amp0000740
ちょうど去年の今頃,ここミシガンでも新型コロナに関する報道が増えていて,3月にイスラエルで開かれるはずだった学会で講演をすることが決まっていたので,キャンセルになったらショックだなと悩んでいたのを思い出す.あれから早一年.今なら学会をオンラインでやるという選択肢があるけれど,当時は直前だったこともあり,結局,学会自体,取りやめになった.私の授業もラボも3月16日からすべてオンラインになった.ただ時差さえ気を付ければ,勉強会がどの国で開かれていようとも簡単に参加できるようになり,これまでメールだけだった研究者ともZoomやGoogle Meetで直接話せる回数が増えた.この1年いろいろなことがあったが,PTGで言えば,これまでの研究成果をまとめた本を日本語で書いたのが大きい(今,出版社で校正中).その本を書き終わった途端,日本語でモノを書くのが週に一回になってしまったので,今日は久しぶりにブログを書くことで頭の体操をしたい.新型コロナの論文をレビューする.
続きを読む…Kunz et al. (2019)
Kunz, S., Joseph, S., Geyh, S., & Peter, C. (2019). Perceived posttraumatic growth and depreciation after spinal cord injury: Actual or illusory? Health Psychology, 38, 53-62. doi: 10.1037/hea0000676
2019年がはじまってあと少しで一か月になる.外の気温はマイナス12度.一昨日はマイナス20度まで下がった.それでもラボのメンバーは朝イチで大学に来る.あと一カ月くらいで去年からやってきた研究の一つが終わりそうなので,それをこの次どう発展させるか,研究デザインを決めようとしているからだ.はじまってしまうとまたしばらく変更できないので,今が大事だ.で,その内容は「本物のPTG」と「幻想のPTG」をどう見極めるか,あるいは一般の人はその違いをどうとらえているのか,ということに関係する.PTG研究を長くやってきているイギリスのノッティンガム大学のDr. Stephen Josephがスイスの研究者と共同研究してこのテーマで論文を発表したのでそれをレビューする.





