人生レシピ
NHKのEテレ、「明日も晴れ!人生レシピ」という番組でVTRにコメントさせていただきました.
エピソードの題名は「人生の苦難 その後を生きる」
放送は2022年11月25日金曜日午後8時
リンクはこちら:https://www.nhk.jp/p/jinsei-recipe/ts/9297GZL6PP/episode/te/DKRJ913Z41/
青年心理シンポ
日本青年心理学会第30回大会の「英語論文シンポジウム」に参加しました。
日時:12月11日(日)9:00〜11:00(大会2日目)
開催方法:オンライン(リアルタイム)
企画:日本青年心理学会国際研究交流委員会
私は自分自身の英語論文の執筆経験や、指導の工夫やコツについて話題提供しました。資料はこちらのリンクの真ん中あたりにパワーポイントとPDFをダウンロードできるようにしてあります。
論文執筆に使えるリソース
「ゲーム感覚で身につく論文執筆ー『今よりもっと論文を書く』と決めた研究者へ」という本を飯村周平先生,松井智子先生と風間書房から出版させていただいたので,それに対応するようなユーチューブビデオをアップしています.英語版はこちらです.また,論文執筆に役立ちそうなリソースは,このリンクに載せています.
そのリンクからワード文書でダウンロードできるファイルは以下の通りです(リンク先のファイル名はこれらの英語版になっています).
- APAにフォーマットした論文のサンプル
- 回帰分析用の表
- 因子分析用の表
- デモグラフィック変数をまとめるための表
- 階層重回帰分析用の表
- 二群別の相関係数の表
- 横型の表
- 構造モデル用の表
- 因子分析プラス相関の表
- 既に出版されている論文を投稿した時のワードのファイル(そして出版後のPDFのリンク)
ビデオ版:心理学の卒業研究ワークブック
ゲーム感覚で身につく論文執筆
「ゲーム感覚で身につく論文執筆ー『今よりもっと論文を書く』と決めた研究者へ」という本を,飯村周平先生,松井智子先生と一緒に書きました.三人で書いている間じゅう,私はとても楽しかったです.読む人にも楽しく読んでもらえたらいいなと思います.また感想などお聞かせください(メールアドレスは,taku@kanakotakuです)
目次は以下の通りです
続きを読む…講演会終了
- 講演:コロナ禍と心の成長ーPTG研究から考える(宅香菜子)
- 日時:2021年12月11日土曜日午前10時から12時
- 主催:室蘭工業大学 前田潤先生
- 来場(北海道大学 学術交流会館):https://ptgtakukanako20211211inperson.peatix.com/
- オンライン:https://ptgtakukanako20211211online.peatix.com/
- 講演内容:強いストレス症状を引き起こす,つらく苦しい出来事やトラウマをきっかけに,悩み,精神的なもがきを経験することで人間として成長する現象をPTG(Post Traumatic Growth:心的外傷後成長)と言います。本講演では,なぜ誰もがPTGを知っておくと良いのかその6つの理由,そしてPTGの何を知ってほしいのか6つの内容をまとめました。今後,臨床にいかすには具体的にどうすればよいか,研究にいかすにはどうしたいか,実際に自分なりにデータを取って,そういう試みをいくつかやってみて,また数年後にその結果を皆様にご報告したいと思っていますので,今後ともどうぞよろしくお願いします.
インタビュー記事
Vogue Japanの企画でPTGに関するインタビューにお答えしました.「トラウマからの人間的成長。ウイズコロナで注目されるPTGを知ろう」です.リンクはこちら:https://www.vogue.co.jp/beauty/article/mental-onayami
APA (2021)
今年2021年のアメリカ心理学会(APA: American Psychological Association)が8月12日から14日までオンラインで開催されます.そのメインステージのスピーカーの一人として,PTGに関するインタビューに答えました.
- PTGとは何ですか?人によって違うんですか?
- トラウマを経験した後成長に向かって踏み出す最初の一歩はどういうものですか?
- PTGを促進するためには専門家による援助が必要ですか?
- 自分自身ではPTGを経験するためにどんなことをしていますか?

Taku, K. (2021, August). Growing from our Traumatic Experiences. Invited interview for the Main Stage session, “The Science of Resilience – Bounce Back from Adversity”, at the 129th American Psychological Association (APA) Annual Convention, Online.
宅(2021)
昨年の春頃から執筆していた本が,風間書房様より,今月末に出版となりました.
単著は7年ぶりでしたので,PTG研究の成果はもちろんのこと,大学教育の魅力について思う存分書かせていただきました.
目次は以下の通りです.
続きを読む…Götz et al. (2021)
Götz, F. M., Gvirtz, A., Galinsky, A. D., & Jachimowicz, J. M. (2021). How personality and policy predict pandemic behavior: Understanding sheltering-in-place in 55 countries at the onset of COVID-19. American Psychologist, 76, 39-49. doi: 10.1037/amp0000740
ちょうど去年の今頃,ここミシガンでも新型コロナに関する報道が増えていて,3月にイスラエルで開かれるはずだった学会で講演をすることが決まっていたので,キャンセルになったらショックだなと悩んでいたのを思い出す.あれから早一年.今なら学会をオンラインでやるという選択肢があるけれど,当時は直前だったこともあり,結局,学会自体,取りやめになった.私の授業もラボも3月16日からすべてオンラインになった.ただ時差さえ気を付ければ,勉強会がどの国で開かれていようとも簡単に参加できるようになり,これまでメールだけだった研究者ともZoomやGoogle Meetで直接話せる回数が増えた.この1年いろいろなことがあったが,PTGで言えば,これまでの研究成果をまとめた本を日本語で書いたのが大きい(今,出版社で校正中).その本を書き終わった途端,日本語でモノを書くのが週に一回になってしまったので,今日は久しぶりにブログを書くことで頭の体操をしたい.新型コロナの論文をレビューする.
続きを読む…Kunz et al. (2019)
Kunz, S., Joseph, S., Geyh, S., & Peter, C. (2019). Perceived posttraumatic growth and depreciation after spinal cord injury: Actual or illusory? Health Psychology, 38, 53-62. doi: 10.1037/hea0000676
2019年がはじまってあと少しで一か月になる.外の気温はマイナス12度.一昨日はマイナス20度まで下がった.それでもラボのメンバーは朝イチで大学に来る.あと一カ月くらいで去年からやってきた研究の一つが終わりそうなので,それをこの次どう発展させるか,研究デザインを決めようとしているからだ.はじまってしまうとまたしばらく変更できないので,今が大事だ.で,その内容は「本物のPTG」と「幻想のPTG」をどう見極めるか,あるいは一般の人はその違いをどうとらえているのか,ということに関係する.PTG研究を長くやってきているイギリスのノッティンガム大学のDr. Stephen Josephがスイスの研究者と共同研究してこのテーマで論文を発表したのでそれをレビューする.
Tedeschi & Blevins (2015)
Tedeschi, R. G., & Blevins, C. L. (2015). From mindfulness to meaning: Implications for the theory of posttraumatic growth. Psychological Inquiry, 26, 373-376. doi: 10.1080/1047840X.2015.1075354
意味などない,悪夢としか思えないような出来事の中に何らかの意味を見出せることもPTGの一つだ,と考えてきた.でもはたしてそうだろうか.「多くの研究者は,怒りと暴力と復讐が鬱状態を解消する薬になるらしいことに注目している.憎しみと復讐によって意味と目的があたえられ,鬱病による無力感と苦痛を撥ね返すのである.チェチェン紛争で死傷した戦友の復讐を誓ったロシア兵には,まぎれもなくこの作用がはたらいていた.報復行為は世界中の文化圏で報告されている.中略.考えられる理由の一つは,暴力は興奮をかきたて,力をあたえ,鬱の苦しみから強制的に気持ちをそらせるはたらきがあるのかもしれないということだ.それがほんとうなら,背筋が寒くなるような可能性が考えられる.若者のあいだで鬱病と自殺の率が上昇しているとすれば,他者への憎悪と暴力もそれにつれて増加するのではないか.それは,意味も目的もなさそうな世界で,粗暴な若者が鬱病をみずから治療しようとする行為なのかもしれない(ラッシュ・W・ドージアJr著.桃井緑美子訳「人はなぜ『憎む』のか」河出書房新社.P.130)」. 続きを読む…
Johnson et al. (2017)
Johnson, J., Panagioti, M., Bass, J., Ramsey, L., & Harrison, R. (2017). Resilience to emotional distress in response to failure, error or mistakes: A systematic review. Clinical Psychology Review, 52, 19-42. doi: 10.1016/j.cpr.2016.11.007
心的外傷後成長のプロセスを見る研究では,出来事が予期せず襲い掛かってくるようなパターンが多い.心の準備もままならない間にさまざまなことが降りかかってきて,心の整理がつかない.なすすべもなく,どん底に突き落とされてそこからまたどう生きるか.そこでの葛藤や心のもがきとPTGは親和性が高い.けれども,なすすべがいくらでもあったのに,自分にできることがたくさんあったのに,それをしなかったために出来事が起きてしまった時はどう考えたら良いのだろう.どん底に突き落とされたのではなく,自業自得の場合.いくらでも防げたのに...3年くらい前から私の研究室ではそういう状況でのPTGも研究してきていて,やっとデータが揃い始めた.今日はそのデータをまとめる上で参考になりそうな論文をレビューしたい. 続きを読む…
宅 (2017) レジリエンスとPTG
2017年9月に金剛出版から発行された「臨床心理学」の雑誌(17巻,5号)でレジリエンスについての特集が組まれました.私も,「レジリエンスとPTG(心的外傷後成長)」というタイトルで寄稿しました(P.654-658).
「レジリエンス―それは大変つらい状況に陥ったとき,どんどん深みにはまってゆくのではなく,持てるものをなるべくうまく使って,そこから抜け出すことができるイメージだ.ただ抜け出すだけではなく,その経験を糧にできる,そういった強さやしなやかさも感じられる(中略).PTG(Post-traumatic Growth)-それは大変つらい状況に陥ったとき,抜け出したくても抜け出せず,解決するすべもなく,ただもがくなかで,表面的にはほとんど何も変わっていない.よりうまく適応できるようになったとは限らず,症状が必ずしも軽くなったわけでもないけれど,一人の人間としては成長しているとしか表現のしようがない変化を経験しているイメージだ(中略).本稿では,両者の関連を論じる(「臨床心理学」第17巻第5号,P.654,「I.はじめに」より抜粋). 続きを読む…
Weststrate & Glück (2017)
Weststrate, N. M., & Glück, J. (2017). Hard-earned wisdom: Exploratory processing of difficult life experience is positively associated with wisdom. Developmental Psychology, 53, 800-814. doi: 10.1037/dev0000286
PTGのモデルに含まれている構成概念で,これまで深く研究対象にしてこなかったものに「Wisdom(英知,知恵)」がある.英知の備わっている人のイメージとしては,杖のついたおひげのおじいさん.アルプスの少女ハイジに出てくるクララのおばあさん.穏やかで,動揺せず,先を見通していて,包み込むようなイメージ.でも必ずしも年をとった人だとは限らず,(具体的な例は思いつかないけれど)誰かがWisdomを発揮している場面にでくわすと,「うわあ...さすがだな」と思い,自分もそういう解決方法とか,咄嗟の行動とか,言葉のチョイスとかができたらいいのにな,とか思ったりする.また,自分で何かを決めた後で,もう一度よく考えてみたらそうするんじゃなかった,と悶々としたりして,せっかく「三人寄れば文殊の知恵」と言うことわざがあるんだから,色々な人の意見を聞けばよかったなと思うこともある.「健康(well-being)」や「幸せ(happiness)」,「満足(satisfaction)」などの軸とは,また別の「賢さ,英知(Wisdom)」の軸.私の大学はあと一週間で入学式.新学期が始まり,うちの研究室にも新しいメンバーが加わる.彼らとの新しいプロジェクトを考えるにあたってWisdomの研究はどういう手法を取るのか勉強しておきたくて夏休みの間に読んでいた論文がこれだ. 続きを読む…
Johnson et al. (2009)
Johnson, R. J., Canetti, D., Palmieri, P. A., Galea, S., Varley, J., & Hobfoll, S. E. (2009). A prospective study of risk and resilience factors associated with posttraumatic stress symptoms and depression symptoms among Jews and Arabs exposed to repeated acts of terrorism in Israel. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy, 1, 291-311. doi: 10.1037/a0017586
ああいうことがあったけれど,「私はお父さんとお母さんの子どもで本当によかった」,「日本人に生まれて心底よかった」,「この先生でよかった」などと感じるとき,その「よかった」はどういう意味だろうか.PTGで言うところの『人生に対する感謝』のようなものだととらえてよいのだろうか.では,こういうことがあって,「私はああいうお父さんとお母さんの子どもじゃなくてよかった」,「私はxx人に生まれなくて心底よかった」,「あっちの先生じゃなくてよかった」と感じたら,その「よかった」はどういう意味になるのだろうか.自分が所属する集団を好ましく認知し,外集団を批判したり排斥したりするそれを,エスノセントリズムの観点から検討し,PTGはむしろそれを招く,したがってPTGは有害な場合がある,と結論づけた研究が今日レビューする論文だ.多様性を認め,(自国から見た)歴史的背景を学び,さまざまな差別があることを知った上で,国全体に影響を及ぼすような大きな自然災害の後などに,「それでもやはり,日本に生まれて本当によかった」,「これからの日本の未来は日本人が決めるべき」,「外国人も日本に住んでいるなら,郷に入れば郷に従えで日本のルールに従うべきで,嫌なら出て行けばいい」と感じたら,それはマズイのだろうか.「ヘイト」にさえつながらなければ,意味云々は人それぞれで良いのだから,追究する必要はないのだろうか.Jonathan Haidtの『The righteous mind: Why good people are divided by politics and religion 』,もう一度,アメリカに帰ったら読んでみようかな. 続きを読む…
Dekel, Mandl, & Solomon (2013)
Dekel, S., Mandl, C., & Solomon, Z. (2013). Is the Holocaust implicated in posttraumatic growth in second-generation Holocaust survivors? A prospective study. Journal of Traumatic Stress, 26, 530-533. doi: 10.1002/jts.21836
私が所属しているOakland Universityの心理学部は進化心理学がものすごく盛んだ.うちの大学院に応募してくる学生の多くが進化心理学を学びたくて来る.そのため,どれだけ一人ひとりの院生が違うテーマを選んだとしても,その背後に,私達が生まれてくる以前の人類の歴史とか,人間以外の生き物の進化とかが必ずと言っていいほど入ってくる.私は自分自身がそういう授業を受けたことがないこともあり,勉強がなかなか追いつかない.で,そんな中から湧いてくる疑問.人は自分の先祖が経験したトラウマにどう影響されているのだろうか.トラウマの世代間伝達.このテーマに関しては,PTSDを中心としたネガティブな影響に焦点を当てて,かなり研究がなされてきているが,果たしてPTGにはどのような影響があるのだろうか.イスラエルの研究者ソロモンらが,その可能性を検討しているので,今日はそれをレビューしたい.結論から言うと,第二世代(つまり親がトラウマサバイバー)であるという事実はPTGに負の効果,つまりPTGを抑制するようだ. 続きを読む…
Fleeson (2014)
Fleeson, W. (2014). Four ways of (not) being real and whether they are essential for post-traumatic growth. European Journal of Personality, 28, 336-337. doi: 10.1002/per.1970
去年のサバティカルをきっかけに研究テーマを広げたので,勉強することがたくさんある.それぞれのテーマの背景や歴史を知らないこともあって,論文を読むのにも時間がかかる.とは言え,新PTGハンドブックの執筆は続いていて,今週は「PTGを本物―幻と分類すること」についてどう考えるか,という章を執筆している.来週からは臨床実践の章に入る.ちょうど昨日,うちの大学では大学院生の面接があったが,私のラボに応募してくる学生の多くがこの「本物のPTGと幻のPTG」というテーマを修論ないしは博論にしたいと考え,さまざまなアイデアを持ち込んでくる(ちなみにアメリカでは大学ごとの院試はなくて,GREというテストがあり,その結果とGPAとカバーレターと推薦書等を総合して決める).さて,院生のみならず多くの研究者がこの部分をなんとか解決しようとここ数年,躍起になっているが,「別に解決しなくてもいい場合もあるんじゃない?」という論考があったのを思い出したので,それをレビューしたい. 続きを読む…
「PTGの可能性と課題」(2016)
この11月,27名の著者からなる「PTGの可能性と課題」が金子書房から出版されます.
―「はじめに」から一部抜粋―
本書は,「ポストトラウマティック・グロウス(心的外傷後成長)」,すなわち非常につらい出来事をきっかけとした人間としての成長という現象,およびその近接領域のテーマに関して,これまでどのような研究がなされてきたか,そして臨床実践がどう積み上げられてきたか,今後の可能性と課題を一冊に集約したものである.そのテーマは,ポストトラウマティック・グロウス(Posttraumatic Growth)の頭文字を取って,PTGと呼ばれている.PTGとは,心的外傷を引き起こすような大変つらい出来事や突然の不幸な出来事など,危機的な状況に直面した人々が,さまざまなストレスを経験しつつも,それと向き合う結果生じる人間としての成長を表す.」 続きを読む…