Johnson & Boals (in press)

7月 31, 2015 コメントは受け付けていません

Johnson, S. F., & Boals, A. (in press). Refining our ability to measure posttraumatic growth. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy. doi: 10.1037/tra0000013

来週APA(American Psychological Association)の学会が始まる.私は水曜日(8/5)から日曜日(8/9)までフルで参加の予定だ.学会への参加はなるべく年に1回と決めているので今年はこれ一本.特に楽しみなのは最終日のシンポジウムで,Rich Tedeschiとも一年ぶり.Jane Shakespeare-Finchとは数年前のISTSS(International Society for Traumatic Stress Studies)以来なので話したいことがたくさんある.で,今日レビューする論文はこのAPAのDivision56 トラウマに関連する部門が発行しているジャーナルにアクセプトされたものだ.今回この論文を選んだのは,読んですぐにため息が出るくらい「すごく勉強になる」と思ったからだ.多分一週間くらい前だと思うけれど,最初読んだとき図書館にいたにもかかわらず,「なるほど」と声が出たくらいだ.私がPTGマニアだから特にそう思ったのかもしれないけれど. 続きを読む…

Taku & Oshio (2015)

6月 22, 2015 コメントは受け付けていません

Taku, K., & Oshio, A. (2015). An item-level analysis of the Posttraumatic Growth Inventory: Relationships with an examination of core beliefs and deliberate rumination. Personality and Individual Differences, 86, 156-160. doi: 10.1016/j.paid.2015.06.025

早稲田大学,小塩真司さんとの共著論文をレビューしたいと思う.PTGIという自己記述式の尺度が1996年に発表されてから20年弱が経過しているが,ここ数年,PTGIの妥当性にまつわる研究が増えている.これら妥当性に関する研究の三分の一くらいが,「この尺度には妥当性に問題がある.このままの形で使うべきではない.これを使って発表されてきたこれまでの全ての論文は真のPTGを反映しているとは言えない.即刻やめて,これからは別の方法を考えるべきだ」と言っていて,三分の二くらいは,「この尺度には妥当性がある.だからと言って尺度が完璧であって改善の余地がないとは言わないが,これを使って発表されてきたこれまでの全ての論文には意味がある.これからもさらなる開発,発展を考えていくことが必要である」と言っている.そこで,私たちは,このどちらの側に立つとか,どちらの方が正しいとかを議論するのではなく,そのいわば中間,この尺度には妥当性が「ある」部分と「ない」部分が混在している可能性があるのではないか,という仮説を立ててこの論文を執筆した. 続きを読む…

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Blackie, Jayawickreme, Helzer, Forgeard, & Roepke (in press)

6月 5, 2015 コメントは受け付けていません

Blackie, L. E. R., Jayawickreme, E., Helzer, E. G., Forgeard, M. J. C., & Roepke, A. M. (in press). Investigating the veracity of self-perceived posttraumatic growth: A profile analysis approach to corroboration. Social Psychological and Personality Science. doi: 10.1177/1948550615587986

この前の前(2015年3月8日)にレビューしたJayawickremeらの最新の論文.「PTGはパーソナリティの変化としてみるべきであり,横断的方法,つまり振り返り法による自己報告に頼らず,縦断的方法などを用いて,客観的にどう変わったかをみるべきだ」という主張の研究グループである.その彼らが,「自己報告によるPTGの正確さ(精密さ・信憑性)」というタイトルで論文を出版したのだから,俄然興味がわく.この論文で,彼らは,「PTGがもし客観的かつ本当の成長を測定しているのであれば,本人をよく知る友人や家族はその変化について気づいているはずである.したがって,両者の評定は高く相関するはずである.もしも相関しないのであればそれは,本人が変わったと思い込んでいるだけであって,妥当性に欠くだろう」という仮説を検証した.まあ一言で言えば,「裏を取る」感じの研究だ.いずれにしろ,この種類の研究はまだ数が少ないので,データとしては貴重だ.

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Marshall et al. (2015)

4月 26, 2015 コメントは受け付けていません

Marshall, E. M., Frazier, P., Frankfurt, S., & Kuijer, R. G. (2015). Trajectories of posttraumatic growth and depreciation after two major earthquakes. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy, 7, 112-121. doi: 10.1037/tra0000005

PTGの研究で最も手に入りにくいデータのひとつは,出来事が起きる前のデータである.縦断研究を計画する際,初回にベースラインとして,その人の性格とか考え方とかのデータを取るとする.二回目のときに,「初回から今日までの間に自然災害や生死にかかわるような大変な出来事を経験しましたか」と問い,それに対して「はい」と回答した人のみ,初回のデータがベースラインになり得る.「いいえ」の場合にはこの二回目もベースラインのまま,三回目の調査を待つことになる.調査協力者の人に災難がふりかかるのを待つ研究デザインになる.しかも実際には,研究計画案を申請する際,それが縦断研究であることも,二回目(ないしは三回目)にどのような質問をするつもりでいるかということもすべて初回の同意書に含める必要があり,その点に対して初回に説明し,同意してもらわないことには調査を始めることすらできないため,こういった計画は倫理上とても難しい.そんななか,わりと奇跡的なデータを使った論文が発表された.ニュージーランドで2011年の2月に大きな地震があったが,その4ヶ月前(一回目),地震の3ヵ月後(二回目),そして地震の1年後(三回目)の合計三回からなる縦断調査である.ちなみに,この一回目のデータは奇しくも別の地震の一ヵ月後だったため,2度の地震を経験した人たちに3回からなる質問紙調査をお願いしたという貴重なデータとなっている. 続きを読む…

Jayawickreme & Blackie (2014)

3月 8, 2015 コメントは受け付けていません

Jayawickreme, E., Blackie, L. E. R. (2014). Posttraumatic growth as positive personality change: Evidence, controversies and future directions. European Journal of Personality, 28, 312-331. doi: 10.1002/per.1963 「European Journal of Personality」という人格心理学専門の学術雑誌で,昨年PTGの特集が組まれた.この号では,アメリカのウエストフォーレスト大学の二人の研究者がPTG研究について現在問題となっている点を指摘し,今後どのような研究が必要かについて提言を行っている.私なりに解釈すると,著者には二つ言いたいことがあるのだと思う.ひとつめ.PTGIという尺度を用いた横断的な研究手法が氾濫しているせいで,PTGの研究の発展が妨げられている.研究者はPTGIを使うのを今すぐやめるべきである.ふたつめ.人格心理学者がPTGにもっと関心を持つべきである.生涯発達の見方を持ち出すまでもなく,パーソナリティが変わり得るということは知られている.大変なストレスを引き起こすようなつらい出来事から人がどう変わるかというPTGにパーソナリティ心理学がこれまで蓄積してきた研究方法論や理論を導入することで,PTGの理解もより深まるだろうし,パーソナリティが発達・成長・変化するということに対する理解も深まるだろう. 続きを読む…

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Heintzelman, Murdock, Krycak, & Seay (2014)

2月 16, 2015 コメントは受け付けていません

Heijtzelman, A., Murdock, N. L., Krycak, R. C.,  & Seay, L. (2014). Recovery from infidelity:Differentiation of self, trauma, forgiveness, and posttraumatic growth among couples in continuing relationships. Couple and Family Psychology: Research and Practice, 3, 13-29. doi: 10.1037/cfp0000016

最近,来年のサバティカルに合わせて新たに始めたいと思っている研究のことをよく考える.これまで依拠してきたTedeschi&CalhounのPTGモデルになるべく固執しないように,ブレインストーミングの方法として私が今やっているのは,文献をレビューしながらメモを取るという方法だ.レビューする文献は,これまでに全くと言っていいほど勉強してこなかった領域についての論文と,これまでに自分がやってきた領域の論文を交互に読むように心がけている.例えば,「PTG」関連の論文を読んだ次の日は「比較心理学」の論文を読む.で,また「PTG」関連の論文を読んで,次は「言語心理学」の論文を読む.昨日は「環境心理学」の論文を読んだ.なので今日は「PTG」関連.というわけで,今日読んだこの論文がとてもおもしろかったのでそれを以下にレビューしたい. 続きを読む…

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Su & Chen (in press)

1月 10, 2015 コメントは受け付けていません

Su Yi-Jen, & Chen Sue-Huei. (in press). Emerging posttraumatic growth: A prospective study with pre- and posttrauma psychological predictors. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy. doi: 10.1037/tra0000008

PTGについての研究で縦断的なデータを扱ったものは多くない.PTG(心的外傷後成長)という概念の特徴から,どうしても研究は後手にまわりがちだ.とは言っても縦断研究が全くないわけではないので,そんな中から,冬休み中に共同研究者から紹介された論文をレビューしたい.これは台湾の研究者によるもので,まず810名の大学生からデータを取り,その2ヵ月後にも参加した592名の中から,この期間内にトラウマを経験した110人をデータ分析の対象としている.この研究のウリは,トラウマを経験する以前の個人特性がPTGに及ぼす影響を縦断で見ることができた点にある.いくつか主要な結果があるけれど,私が最も大切だと思う結果は,パーソナリティの神経症傾向がPTGを予測しなかったという点だ.この「神経症傾向とPTGの間に負の相関がない」という知見は,PTG研究一番最初のTedeschi & Calhoun (1996)でも既に見出されている.これは,PTGとレジリエンスの質的な違いを示す重要な証拠だと思う. 続きを読む…

PTG & Resilience

1月 10, 2015 コメントは受け付けていません

この冬休み,何かと「PTGとレジリエンス」に関して考えることが多かったので,2015年はこの話題からスタートしたい.両者の関係に関して,数年前のTEDトークを思い出したので,久しぶりにまた見てみた.それは,ジェイン・マックゴニガルという女性によるトークで,2012年にこのトークがオンエアされた直後は,「TEDトークの中にPTGが出てたよ」と同僚や友達からメールをもらったことを覚えている.ちょうど2012年の夏,私たちの研究グループはフロリダのオーランドでAPA(アメリカ心理学会)に出ていたので,そこに来ていた他のPTG研究者たちとも,「あれ見た?」と話しては,彼女のトークの内容についてあれやこれやと話し合ったものである.トークのタイトルは「ゲームで10年長生きしましょう」というもので,PTGは11分くらいのところに出てくる. 続きを読む…

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Westphal & Bonanno (2007)

10月 11, 2014 コメントは受け付けていません

Westphal, M., Bonanno, G. A. (2007). Posttraumatic growth and resilience to trauma: Different sides of the same coin or different coins? Applied Psychology: An International Review, 56, 417-427. doi: 10.1111/j.1464-0597.2007.00298.x

PTG理論モデルでは,起きた出来事によって自分がこれまでに信じてきたことや価値観が「認知的に」どう揺さぶられ,「認知面で」そのことをどのように考え,打ち砕かれた信念をどのように「認知的に」再構築するかという一連の流れが,一つの主な道筋として示されている.これがPTG理論の弱点でもある.つまり,認知面に重点が置かれすぎていて,結局はとらえ方次第ということなのかという疑問が出てくるからである.これに異議を唱えているのが,Hobfollらである.彼らは行動を伴った上での成長の実感なら本物だと認めるけれど,行動が伴っておらず,認知面で成長を実感しているだけならばそれは思い込みに過ぎないと主張している.その議論に対してさらに反対意見を唱えているのがこの論文である. 続きを読む…

Tedeschi, Calhoun, & Cann (2007)

8月 24, 2014 コメントは受け付けていません

Tedeschi, R. G., Calhoun, L. G., & Cann. A. (2007). Evaluating resource gain: Understanding and misunderstanding posttraumatic growth. Applied Psychology: An International Review, 56, 396-406. doi: 10.1111/j.1464-0597.2007.00299.x

この秋,11月に神戸で開かれる日本教育心理学会において,「大災害に対して心理学はこれまで何をしてきたのか?これから何をすべきなのか?」というシンポジウムが開かれる.私も演者の一人としてそこに参加し,PTGの観点から話をする予定になっている.日本教育心理学会への参加は渡米前,まだ名古屋大学の院生だった頃の2003年が最後なので,11年ぶりとなる.それで,自分はそこでなにを一番話したいか…ということを時々考える.そのヒントになるかなと思ったので,Richらが書いた2007年の論文を読み返してみた.この論文は,PTGによくある誤解を解くため,Hobfollらの論文にコメントする形式で書かれている.これを読むと,Tedeschi&Calhounの立ち位置はよくわかる. 続きを読む…

Shakespeare-Finch et al. (2013)

8月 23, 2014 コメントは受け付けていません

Shakespeare-Finch, J., Martinek, E., Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2013). A qualitative approach to assessing the validity of the Posttraumatic Growth Inventory. Journal of Loss and Trauma, 18, 572-591. doi: 10.1080/15325024.2012.734207

私たちの研究室では,この9月からまた別の介入研究を始める.今回の調査はアメリカ人のみを対象とするものなので,研究計画書やアンケートはすべて英語のみの準備だった.でも将来,もし同じ研究を日本でやれるとしたらどんな感じになるのかなと思ったので,アンケートのみざっと日本語に訳して自分でやってみた.30分くらいかかった.「心的外傷後成長尺度(PTGI)」に回答するのは結構久しぶりだったので,なかなか新鮮だったけれど,同時に,各項目に対していろいろと思うところもあって,(PTGIは,やっぱりつっこみどころ満載だな…)という思いを新たにした. 続きを読む…

APA (2014)

8月 11, 2014 コメントは受け付けていません

8月7日(木曜日)から10日(日曜日)まで,ワシントンDCで開かれたAPA(American Psychological Association:アメリカ心理学会)の学会に参加し,研究発表をしてきた.研究室のメンバーのポスターが表彰されるなど嬉しい出来事もたくさんあった.写真等はこちら(研究室のホームページ)をクリック.

最も強く印象に残ったことは,(1)PTGを支持している研究者とPTGに批判的である研究者の対話に参加できたこと,(2)個人主義かつ自己愛がますます高くなっている現在の状況に対して歯止めをかけようとする動きが思っていた以上にあること,(3)DSM-Vの問題点にまつわる議論のみならず,DSMにかわる基準やマニュアルを作ろうとする動きが出てきていること,そして(4)政治,社会問題や環境問題などに心理学が貢献しようとする可能性についての研究も増えていること,である.この4点はどれも私の研究テーマに直接関連しているので,今後の方向性を考えるにあたっていい材料になると思う.

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Linley & Joseph (2011)

7月 30, 2014 コメントは受け付けていません

Linley, P. A., & Joseph, S. (2011). Meaning in life and posttraumatic growth. Journal of Loss and Trauma, 16, 150-159.

今日,論文を読んでいて,「ああ,そういえば,PTGと言っても必ずしもPTGIを使って測定しているとは限らないんだった」という当たり前のことを思い出したので,その論文をレビューしたい.「Posttraumatic growth(心的外傷後成長)」というキーワードが学会誌に出たのは1996年のTedeschiとCalhounの論文で,同じその論文がPTGI尺度構成に関するものとなっている.つまり,「PTG」という現象と「PTGI」という尺度は同時に出ている.そもそもPTGとは,どうやらTedeschi先生とCalhoun先生で話をしている時に,「人がつらい出来事をきっかけとして人格的な成長を遂げてゆく」という現象があることは多くの人が知っているだろうけれど,それに名前があった方が何かと便利だろうと考え,いろいろなキーワードをリストアップしていく中で,Tedeschi先生がたまたま思いついて,二人ともすぐ気に入ったという話を御本人たちから聞いたことがある.で,その後現在に至るまで,「PTG」という現象を扱った論文のほとんどが,Tedeschi&Calhounを,そもそものスタートとして引用している.けれども,ほとんど同時期,あるいはもしかしたらTedeschi先生たちよりも前にこの現象に着目して,しかも尺度も作って論文に出したりしていた先生たちも少なからずおられる.で,そういう研究者たちの中のお二人が,この論文の著者である,イギリスの研究者Drs. Linley & Josephだ.

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Hobfoll et al. (2007)

6月 12, 2014 コメントは受け付けていません

Hobfoll, S. E., Hall, B. J., Daphna, C.-N., Galea, S., Johnson, R. J., & Palmieri, P. A. (2007). Refining our understanding of traumatic growth in the face of terrorism: Moving from meaning cognitions to doing what is meaningful. Applied Psychology: An International Review, 56, 345-366.

PTGは研究者魂を熱くしてくれる.このレビュー論文も挑戦的な内容で,端的に言うと,「その出来事に意味があったと認知面でとらえること」に重点を置いたPTGの考え方から「その出来事の結果意味ある行動を取れるようになること」に重点を置いたPTGへと考え方を変えるべきではなかろうかという提言である.これを彼らは「Action-focused growth(行動に焦点を当てた成長)」と呼んでいる.つまり,自分がある出来事をきっかけに人間として成長したと自覚しているかどうかよりも,実際にその結果何をしているかという現実の行動が大事であり,行動上の変化を伴ってこそ真の成長であるという主張である.

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Shakespeare-Finch & Lurie-Beck (2014)

4月 21, 2014 コメントは受け付けていません

Shakespeare-Finch, J., & Lurie-Beck, J. (2014). A meta-analytic clarification of the relationship between posttraumatic growth and symptoms of posttraumatic distress. Journal of Anxiety Disorders, 28, 223-229. doi: 10.1016/j.janxdis.2013.10.005

ここ数週間ほど,PTGとPTSD症状の関係を明らかにしたくて取り組んでいるデータの分析が行き詰っていて,どうにもこうにも前に進まないので,基本に立ち返る意味で,この新しく出たばかりの論文を読んだ.PTGに関する論文でメタ分析に取り組んだものは数が少ないので,この論文は貴重な一本だ.これまでは,メタ分析を引用する際,この領域の研究者はほとんど皆,Helgesonら(2006)一本に頼っていた.というのも,それくらいしかなかったからだけれど,それはもう結構古くなりつつあるし,しかもそこでは,両者の間に仮定される曲線関係について,「曲線関係を示唆している論文が2本あるので,今後はその可能性も検討していく必要があるだろう」みたいに,ちょっと触れられているだけだった.けれども,今回,オーストラリアのPTG研究者であるDr. Shakespeare-Finchの辛抱強い研究のおかげで,この論文が表に出て,私たちPTG研究者にとっては,とてもありがたい.私たちの日本人を対象とした論文も,この中に分析対象として組み込まれている.

Taku (2014)

4月 19, 2014 コメントは受け付けていません

Taku(2014)悲しみから人が成長するとき:PTG (Posttraumatic Growth)」を,2014年3月31日,風間書房から出版させていただきました

― 「はじめに」から一部抜粋 -

PTGとは苦しみをきっかけとして経験される人間としての成長,たったこれだけのことなのですが,それがどんなふうにして起きるのか,何がきっかけになってもたらされるのかなど,たくさんの疑問があります.

私は,人は,「なぜこんな思いをしてまで自分は生きていなければならないのか」,「やっと寝たと思ったら,悪夢を見て目が覚める」,「なぜあの時そうしなかったのか」,そして「なぜあの時ああしたのか」.気持ちの持って行き場がなく,後悔と絶望しかないと思うほどに,つらく苦しい経験をしてなお精神的な成長をとげることがある,ということに魅了され,2000年からこのテーマで心理学の研究をはじめました. 続きを読む…

Roepke (2013)

3月 30, 2014 コメントは受け付けていません

Roepke, A. M. (2013). Gain without paints? Growth after positive events. Journal of Positive Psychology, 8, 280-291. doi: 10.1080/17439760.2013.791715

前回,PTG に関連して,PTDという略語があると書いた.PTGとPTDは,PT(Posttraumatic)の部分が共通していることからわかるように,両方とも,トラウマを引き起こす可能性がある出来事をきっかけとした心理的な変化を指すという点で共通している.そして違いは,3つ目のアルファベットで,「G」つまりGrowth(成長)というふうに望ましい方向への変化を示すのか,「D」,Depreciation(下落)というふうに悪い方向への変化を示すのかにあった.実はPTGに関連して,PEGという略語もある.この論文がそのPEGを提唱したものである.PTGとPEGでは「Post」の部分と「Growth」の部分が共通している.つまり,ある出来事をきっかけとした人格的成長を示すという点で共通している.違うのは真ん中の部分.PTGは「T」,つまりトラウマを引き起こす可能性があるようなストレスフルな出来事がきっかけとなっているが,PEGは「E」,つまり快感や喜びをもたらすような「Ecstatic(恍惚となるような)」出来事がきっかけとなる.PTSS, PTG, PTD, PEG,そして私が明日出版の本の中でふれたPPTG,となんだかふざけているみたいに見えるけれど,人が人生の中で節目となるような大きな出来事を経験した際,それにどのように反応し,対処してゆくのか,人として,どう成長・進化してゆくのかということをいろいろな観点で説明しようとしているという点では皆共通していると思う.

Cann, Calhoun, Tedeschi, & Solomon (2010)

2月 23, 2014 コメントは受け付けていません

Cann, A., Calhoun, L. G., Tedeschi, R. G., & Solomon, D. T. (2010). Posttraumatic growth and depreciation as independent experiences and predictors of well-being. Journal of Loss and Trauma, 15, 151-166. doi: 10.1080/15325020903375826

PTGに関連して,PTDという略語がある.PTDを知っていたら,かなりマニアだと思う.好奇心から,「2014年2月の今日の時点で,PsycINFOでPTDをキーワードに入れたら,どれくらいの文献がヒットするかな?5本くらいかな?」と思って調べてみたら,なんと139もヒットした!一瞬びっくりしたけれど,もちろんそんなはずはなくて,よくみてみると,PTDと略されている言葉にはいろいろあるみたい.例えば「Perceived Taste Disturbance(本人によって認識されている味覚異常)」もPTDだし,「Preterm Delivery(早産)」もPTDと略すらしい.なので,PTDと言えば「Posttraumatic Depreciation – つまりGrowth(成長)じゃなくてDepreciation(下落).PTDとはPTGの逆で,トラウマに引き続いて,PTGと同じ5領域の内容で逆にネガティブな方向に変わること」しかないと思っていた私はやっぱりマニアだと思う.で,再度,Posttraumatic Depreciationと全部入力して文献検索してみると,4本出てきた.まあ,そんなものだろう.これは,PTGIが広く使われるようになるにつれて,PTGIにはポジティブな方向の変化しか含まれていないため,回答に偏りが生じているのではないかとか,逆方向の変化も問うた方がいいのではないか,などの批判が出てきたため,PTG研究室のメンバーが,それならと,既存の21項目それぞれに対して逆向きの項目を考え,21項目×2=42項目版(PTGI-42)を作ったのがきっかけになっている.

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Hefferon, Grealy, & Mutrie (2010)

2月 2, 2014 コメントは受け付けていません

Hefferon, K., Grealy, M., & Mutrie, N. (2010). Transforming from cocoon to butterfly: The potential role of the body in the process of posttraumatic growth. Journal of Humanistic Psychology, 50, 224-247. doi: 10.1177/0022167809341996

こ れは,イギリスのポジティブ心理学研究者によるPTGの質的データを元にした論文.私自身は,PTGをポジティブ心理学の一部だと位置づけて研究しているわけではないので,ポジティブ心理学を研究している学者によって語られるPTGにはとても興味がある.同じ現象を研究しているにもかかわらず,引用する論文も違う上に,そこに横たわる価値観やとらえ方などが大きく違うので,とても新鮮な感じがする.この論文は,それに加えて,タイトルにもとても興味を持った.「まゆ(さなぎ)から蝶への転換:PTGプロセスにおいて身体が持つ役割について」.私はまもなく風間書房から2冊目の本を出させていただく予定だけれど,その中で,「人はさなぎから蝶になったという結果をもって成長の実感を抱くことが多いが,さなぎの時にも成長が止まることはない」と論じたばかりだ.だから,このタイトルにはとても興味を持った.しかも,論文を読んでみて,なぜ乳がんサバイバーの方たちの語りが「さなぎから蝶へ」という比喩になるのか,とてもよく納得できた.さらに,心理学者として,つい「心(認知や信念,感情)」にばかり目が向いてしまうけれど,この論文では「身体」が果たす役割について論じていて,そういう点からも,この論文はとても貴重だと思う.

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Cann et al. (2010)

1月 20, 2014 コメントは受け付けていません

Cann, A., Calhoun, L. G., Tedeschi, R. G., Kilmer, R. P., Gil-Rivas, V., Vishnevsky, T., & Danhauer, S. C. (2010). The Core Beliefs Inventory: A brief measure of disruption in the assumptive world. Anxiety, Stress, & Coping, 23, 19-34. doi: 10.1080/10615800802573013

これは,テデスキ先生とカルホーン先生を含むノースカロライナ大学シャーロット校のPTG研究室メンバーの論文.PTGがどんなふうにして起きるのかを説明した理論モデルでは,出来事が起きるまでに自分が信じてきたたくさんのことが激しく揺さぶられ,自分の人生や人間関係などいろいろなことを問い直さざるを得ないような経験をすることが,PTGにとって大きな影響を与えると説明されている.この「自分が信じてきたことが揺さぶられる」という経験の,「揺さぶられ度合い」を測定することはとても難しく,議論は今も続いている.自分が信じてきたことそのものについて測定する尺度は,World Assumptions Questionnaire (WAQ)やWorld Assumptions Scale (WAS)をはじめとしていくつかあるけれど,そこに示されているような信念がどれくらい揺さぶられたか,問い直されたか,を問う尺度はこれまでなかった.なので,その一歩としてArnieが中心となって作成したのが,この「Core Beliefs Inventory(CBI:中核的信念尺度)」になる.この論文では,3つの調査を使って,CBIの信頼性及び妥当性を検討した結果がまとめられている.私たちは去年この尺度の日本語版を作り,データを取ったので,それを今年のAPAで発表する予定になっている.

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