ホーム > PTGの文献・出版物 > Milam, Ritt-Olson, & Unger (2004)

Milam, Ritt-Olson, & Unger (2004)

3月 22, 2013

Milam, J. E., Ritt-Olson, A., & Unger, J. B. (2004). Posttraumatic growth among adolescents. Journal of Adolescent Research, 19, 192-204. doi: 10.1177/0743558403258273

私の研究室では,メンバーがそれぞれ順番に自分が特に興味を持ったPTGの論文について「自分が彼らの共同研究者だったら」という目線で発表する場をもうけている.発表者以外は私も含めていろいろな質問をするんだけれど,それに発表者がどう答えるかが見所になる.昨日はちょうどその日にあたり,一人の学生がこのMilamの論文を選んで発表した.その際の私の反応は,「おお,久々にクラシックな論文」.私は名古屋大学にいた博士後期過程の時からPTGにまつわる論文を集めては,自分なりに番号をつけて整理していて,今ではその番号は653になっている.この論文の番号は「24」.すごく古い.歴史あり.名古屋大学時代にコピーしているため,名古屋大学図書館のはんこ付きで,紙もちょっと茶色い.私が渡米後に英語で論文を書き始めて最初のうちよく言われたアドバイスは,古い論文ばかり引用しないで,新しいもの,印刷中のものをどんどん入れていきなさいというものだ.

私が日本で受けた教育から考えると,論文の新しい古いという年代よりも,いかに自分の論点に関連しているか,仮説構築のための流れを補強してくれるかがはるかに重要だと思うんだけれど,そんなことを言ったとしても,大体私の共著者はあまり意に介さず,(はいはい,それはそうとして,5年以上前の論文をこんなに引用する必要はない.ここ1,2年の流れが大事)という感じだ.というわけで私もすっかりそれが身についてしまっていて,2004年の論文を見ると,ああ,懐かしいという感じになる.前置きが長くなったけれど,この著者,Milamはこの後どんどんおもしろいPTGの論文を発表しているばりばりの現役,同世代のPTG研究者だ.その彼の若かりし頃の論文はおもしろいし,勉強になる面がある.この論文のうりは,私から見ると,高校生の非行とPTGだと思う

  • 方法-ヒスパニック系がメインのカリフォルニア州の高校生(平均年齢15.8歳)を対象に行った質問紙調査.PTGとタイトルに入っているけれど,PTGIを使っておらず,大きな出来事の後に起こりえる変化についてポジティブな変化とネガティブな変化の両方を含んだ独自の16項目を用いている.それ以外には,宗教心を測定する項目(お祈りをしますか?教会の教えを実際に行動に移していますか?など)と,薬物乱用に関する項目(マリファナ,たばこ,アルコールなど)も用いている.
  • 結 果-単純相関係数からは,宗教心が高い人ほどPTGも高いという結果であり,またPTGが高い人ほど薬物乱用の度合いが低いという結果であった.それぞれの独自の影響を見るためにPTG得点を結果変数として,年齢,人種,性別,出来事からの経過機関,薬物乱用,宗教心を予測変数にして,重回帰分析を行ったところ,モデルのあてはまりはよかったけれど,決定係数は.07と非常に低い値であった.有意な予測子は年齢と薬物乱用のみであった.

PTGの予測にあたって,今でこそ,出来事にまつわる変数(出来事の衝撃度,出来事が直接自分に起きたものか間接的に他の人に起きたものかなど)や認知にまつわる変数(その出来事に何か意味を見出そうと自分なりにどれくらい考えたかなど),他者からのサポートにまつわる変数(信頼できる人と話すことがあったかどうか,話したことについて聞き手の態度やフィードバックはどうであったか)を含めることで,決定係数が随分上がることは分かっているけれど,この研究に見られるように2004年当時ではまだそこまで系統立ててすべてを網羅した研究は少ない.けれど,このMilamの研究を見てみると,高校生において望まない妊娠,成績の悪化,家族や友人の死,あるいは両親の離婚といったストレスを伴うような出来事があったとしても,そこから成長の実感を報告している人では,そうでない人よりも,非行に関係するような行動(喫煙やマリファナ,飲酒)が低いことが示されている.PTGと名づけないでも,少年院等でなされている矯正教育には,人間としての成長を目指し,社会に再適応していく努力が長年にわたり組み込まれているのだから,その経験から私たちが学び,PTG研究にいかせる面が多くあるように思う.現段階では,PTG研究はサバイバー(患者の方,被災者の方,被害者の方など)あるいはサバイバーと一緒にいる方(サバイバーの家族,支援者,ボランティア,救助者)が中心だけれど,その裾野が広がることを期待したいし,自分でも近いうちにぜひ取り組んでいきたい.

<span>%d</span>人のブロガーが「いいね」をつけました。