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Shakespeare-Finch et al. (2013)

8月 23, 2014

Shakespeare-Finch, J., Martinek, E., Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2013). A qualitative approach to assessing the validity of the Posttraumatic Growth Inventory. Journal of Loss and Trauma, 18, 572-591. doi: 10.1080/15325024.2012.734207

私たちの研究室では,この9月からまた別の介入研究を始める.今回の調査はアメリカ人のみを対象とするものなので,研究計画書やアンケートはすべて英語のみの準備だった.でも将来,もし同じ研究を日本でやれるとしたらどんな感じになるのかなと思ったので,アンケートのみざっと日本語に訳して自分でやってみた.30分くらいかかった.「心的外傷後成長尺度(PTGI)」に回答するのは結構久しぶりだったので,なかなか新鮮だったけれど,同時に,各項目に対していろいろと思うところもあって,(PTGIは,やっぱりつっこみどころ満載だな…)という思いを新たにした.

例えば項目20番は,(自分が経験した危機的な出来事の結果)「人間が、いかにすばらしいものであるかについて、多くを学んだ」というもので,それに対して,全くなかった場合には「0」,かなり強くあった場合には「5」と,6件法で回答する.振り返ってみて,自分にとって転機となったようないくつかの出来事にかんして,あれやこれや考えてみると,確かにあのことをきっかけとして人間というのは捨てたもんじゃないなとか,自分が思っていた以上にすごい生き物なんだとかいう感覚が,全くないということはない,なのでこの項目に対して自信を持って「0」と答えることはない.でも,ああいった出来事にまつわるすべてのことを考えれば考えるほど,人間なんてしょうもないもんだし,人間がすばらしいものであるはずがないという気持ちもかなり大きいので,「5」なんてことはありえない.なので,まあ「2」くらいにしとくか...という感じ.質問紙の尺度は考えすぎるとどう回答したらいいかわからなくなるから,直感的に答えていくのがいいとはわかっていても,こんなふうに,PTGIの項目ごとに,いろいろな考えがわいてくる.例えばこの項目の「人間」は,大勢の一般的な「人間」なのか,自分の人生に深く関係している人たちを指す「人間」なのかなど,考え出すと余計にこんがらがってくる.

この論文はPTGIの項目ごとにインタビューを行い,その結果をまた「項目ごと」に考察している貴重なものとなっている,PTGIを用いている研究のほとんどが合計得点あるいは下位尺度得点のみを用いているものなので,そういう意味では珍しい内容となっている.

  • 論文の目的:心的外傷後成長尺度(PTGI)の信頼性(内的整合性など)に関する研究報告は数多くあるけれど,妥当性に関する報告は今だ多くない.本研究では,半構造化面接を用いて,質的データからPTGIの内容的妥当性を検証する.
  • 研究の方法:DSM-IV-TRのトラウマの基準に合致した経験を有する男女14名が参加した.年齢は18歳から46歳であり,オーストラリアで行われた.面接の前にPTGI21項目に回答してもらい,その後でその結果を見ながら,各項目について詳細を問うた.具体的には,「この項目では『3』を選ばれていますけれど,この項目を読んだとき,どんなことが頭に浮かびましたか」と聞き,それについて自由に話してもらった.
  • 研究の結果:内容分析を行った結果,大筋のところ,参加者はPTGIの項目を誤解なく理解していることがわかった.それに加えて,PTGIに出てくる「他者」という表現では,参加者はそれを「自分の家族や友達」のことを指していると思って回答していることもわかった.また,PTGIには精神性的変容という下位尺度で2項目準備されているけれど,参加者によっては,「宗教」と「精神性」をまったく別個のものだと理解していたことも明らかにされた.参加者の中には逆方向の変化を経験している人もいて,どう回答したらいいか困ってしまったという声も見られた(例えば「新たな関心事を持つようになった」という項目に対して,逆にすべてのことに無関心になったという変化を経験した場合,単純に『0』と回答すればよいのかどうか迷ったという声があった).他には,例えば項目4で「自らを信頼する気持ちが強まった」という場合,ある人は「自らを信頼できるかどうか」というところで回答しており,また別の人は「そういう気持ちが強まったかどうか」というところに注目して回答しているなどのズレがみられた.けれども,全体としてはこういったズレは少なく,予想以上に各項目がこちらの意図どおり参加者に解釈されていることがみてとれた.
  • 考察:本研究の結果,心的外傷後成長尺度は内容的妥当性が十分であるという質的データが得られたと言ってよいだろう.ただし,PTGIに改善の余地もあり,曖昧な語が含まれていることを認識しておく必要があるだろう.

以上

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