ホーム > PTGの文献・出版物 > Blackie, Jayawickreme, Helzer, Forgeard, & Roepke (in press)

Blackie, Jayawickreme, Helzer, Forgeard, & Roepke (in press)

6月 5, 2015

Blackie, L. E. R., Jayawickreme, E., Helzer, E. G., Forgeard, M. J. C., & Roepke, A. M. (in press). Investigating the veracity of self-perceived posttraumatic growth: A profile analysis approach to corroboration. Social Psychological and Personality Science. doi: 10.1177/1948550615587986

この前の前(2015年3月8日)にレビューしたJayawickremeらの最新の論文.「PTGはパーソナリティの変化としてみるべきであり,横断的方法,つまり振り返り法による自己報告に頼らず,縦断的方法などを用いて,客観的にどう変わったかをみるべきだ」という主張の研究グループである.その彼らが,「自己報告によるPTGの正確さ(精密さ・信憑性)」というタイトルで論文を出版したのだから,俄然興味がわく.この論文で,彼らは,「PTGがもし客観的かつ本当の成長を測定しているのであれば,本人をよく知る友人や家族はその変化について気づいているはずである.したがって,両者の評定は高く相関するはずである.もしも相関しないのであればそれは,本人が変わったと思い込んでいるだけであって,妥当性に欠くだろう」という仮説を検証した.まあ一言で言えば,「裏を取る」感じの研究だ.いずれにしろ,この種類の研究はまだ数が少ないので,データとしては貴重だ.

  • 研究の目的:
    • PTG研究は,そのほとんどが,振り返り法による自己報告形式に頼っている.その理由は,人が,正確に過去を振り返ることができると思い込んでいるからだ.けれどもこれまでの研究から,人はかなり自分に都合の良いように過去を書き換えることがわかっている.もし正確にPTGが報告されているならば,本人をよく知る友人や家族もその変化に気づいているはずである.したがって,両者の間には高い正の相関が見られるだろう.
    • ただし,2点気をつけておくべきことがある.1点目は,PTG自体が社会的に見て望ましい変化であることから,友人や家族が期待を込めて,「成長しているはずだ」という方向に偏りのある回答をする可能性があるという点だ.2点目は,PTGとは結構内的な変化(考え方,信念など)なので,たとえ本当に変わっていたとしても,必ずしもその変化が外から見えるとは限らないという点だ.とは言え,先行研究からは,本人とその家族や友人との間にPTGI得点に正の相関がみられているものがほとんどなので,本研究でもこの線で仮説を検証したい.
  • 研究の方法:過去5年以内に,非常につらい出来事を経験したという99名の本人と,141名の本人を知る家族,友人,同僚ら(情報提供者)が質問紙調査に参加した.彼らに,PTGI42項目版(21項目がポジティブな変化を測定する通常のPTGIで,残り21項目がその逆,つまりネガティブな変化(Posttraumatic Depreciation: PTD)を測定するようにデザインされている尺度)に回答してもらった.本人には,自分の身に起きた大変つらかった出来事をきっかけとして自分がどう変わったかを回答してもらい,情報提供者には,この「本人」がどう変わったかについて回答してもらった.
  • 研究の結果:PTGI42項目を使ったPTG及びPTDそれぞれの得点を見てみると,これまでの先行研究と比べて,PTGが低く,PTDが高い傾向があった.ただし,PTGとPTDを比べると,PTGの方が高いというのは先行研究と一貫している.全体の傾向を見たときには,42項目中,ネガティブな変化を問うPTDの合計得点のみ,本人と情報提供者の間に有意な関連が見られた.PTGの方は.16と弱い相関であった.しかし,領域を横並べに比べて検討するプロファイル解析法を用いた場合には,比較的高得点ないしは低得点を示した領域において,本人と情報提供者の間に有意な一致が見られた.
  • 研究の考察:研究の結果,情報提供者は,PTGに関してもPTDに関しても,本人がどう変わったかを有る程度までちゃんと見ることができる,ということがわかった.また本人が自己報告する変化が行動という形で顕在化しているかということに対して情報提供者は敏感であることがわかった.

キーワードに「ポジティブ・イリュージョン(幻想)」が入っていたし,先にこのブログに取り上げたレビュー論文では,随分横断研究に批判的だったので,てっきり,PTGは幻想にすぎないという結論になるのかなと思って読んだ.でも,それはとんだ私の思い込みであって,少なくともこの調査からは,著者たちは「PTGはポジティブな幻想にすぎないという批判はあたっていない.PTGI得点には観察可能で正確だと呼べるようなPTGがある程度は反映されている」という結論を出している.もちろん,この後に「とは言え,情報提供者の回答が客観的で正確なPTGを反映しているとは限らず...」という文章は続き,結局のところ,縦断調査をしない限りは何もわからない,との結論で締めくくられる.

まるでPTGの研究をする誰も彼もが,縦断データの必要性を声高に叫んでいるかのようだ.

<span>%d</span>人のブロガーが「いいね」をつけました。