ホーム > PTGの文献・出版物 > Taku & Oshio (2015)

Taku & Oshio (2015)

6月 22, 2015

Taku, K., & Oshio, A. (2015). An item-level analysis of the Posttraumatic Growth Inventory: Relationships with an examination of core beliefs and deliberate rumination. Personality and Individual Differences, 86, 156-160. doi: 10.1016/j.paid.2015.06.025

早稲田大学,小塩真司さんとの共著論文をレビューしたいと思う.PTGIという自己記述式の尺度が1996年に発表されてから20年弱が経過しているが,ここ数年,PTGIの妥当性にまつわる研究が増えている.これら妥当性に関する研究の三分の一くらいが,「この尺度には妥当性に問題がある.このままの形で使うべきではない.これを使って発表されてきたこれまでの全ての論文は真のPTGを反映しているとは言えない.即刻やめて,これからは別の方法を考えるべきだ」と言っていて,三分の二くらいは,「この尺度には妥当性がある.だからと言って尺度が完璧であって改善の余地がないとは言わないが,これを使って発表されてきたこれまでの全ての論文には意味がある.これからもさらなる開発,発展を考えていくことが必要である」と言っている.そこで,私たちは,このどちらの側に立つとか,どちらの方が正しいとかを議論するのではなく,そのいわば中間,この尺度には妥当性が「ある」部分と「ない」部分が混在している可能性があるのではないか,という仮説を立ててこの論文を執筆した.

  • 問題と目的:PTGが依拠している「TedeschiとCalhounによるPTG理論モデル」に照らし合わせて考えるならば,PTGは,ある出来事を引き金にして,自分自身がそれまでに信じてきたことについて吟味しなおすこと(中核的信念の揺さぶり)と,揺さぶられた信念を再び積み上げてゆくなかで,その出来事にはどんな意味があったんだろうかなどと,意図的・建設的に熟考すること(意図的熟考)の二つが必要である.もちろんこれ以外にも必要な要素はたくさんモデルに含まれているが,これら二つはその中でもキーとなっている概念である.けれども,PTGIの21項目すべてが,本当にこの二つのプロセス(中核的信念の揺らぎ+意図的熟考)を必要としているのかはまだ検討されていない.もしかすると,21項目の中に両方ともを必要としていない項目が含まれているのではないか,それがゆえに全体として妥当性がないのではと言わしめているのではないかと考えた.
  • 方法:関東地方に住む大学生316名が,東日本大震災に関連して,PTGI,CBI(Core Beliefs Inventory),ERRI (Event-Related Rumination Inventory)の日本語版に回答した.
  • 結果:PTGIの21項目のひとつひとつを従属変数にして,CBI得点とERRIの中の意図的熟考得点を予測変数にした重回帰分析を行った.詳しい統計分析の結果は省くと,結果としては,21項目中,以下の5項目のみが,両方からの影響を受けていた.
    • 項目1:人生において、何が重要かについての優先順位を変えた。
    • 項目3:新たな関心事を持つようになった。
    • 項目7:自分の人生に、新たな道筋を築いた。
    • 項目8:他の人達との間で、より親密感を強く持つようになった。
    • 項目14:その体験なしではありえなかったような、新たなチャンスが生まれている。
  • そして残りの16項目中,13項目がCBIのみから影響を受けていた.そして残りの3項目(項目6,19,20)は両方の要因(CBIとERRI)が有意ではなかった.
  • 考察:PTGIには,PTG理論モデルの少なくとも二つの部分(中核的信念の揺さぶりと意図的熟考)に,ある程度完璧に合致するPTG(5項目)と部分的に合致するPTG(13項目)と合致するとは言えないPTG(3項目)が混在している可能性が示唆された.ただし,ほぼ全ての項目(21項目中18項目)が,CBIと有意な関連を示していたことで,PTGは少なくとも何らかの形で信念に揺さぶりをかけてくるような出来事が必要だということが明らかになった.けれども大半の項目(21項目中13項目)が意図的熟考と有意な関連を示さなかったことから,人がPTGを経験・自覚するプロセスにとって,「意味があるのではないか,そこに何らかの意味があったのではないか」とか「何か学ぶところがあったのではないか」などと,どちらか言うと頭で考えるようなメカニズムは必要不可欠とは言えないことも明らかになった.自分がこれまでに信じてきたことが根底から打ち砕かれるような状況を引き金としてPTGが経験されるメカニズムには,「考える」こと以外に大切なモノがある.それを特定するのはまた次の課題.

以上.

カテゴリー: PTGの文献・出版物 タグ: , , , ,
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。