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Cann, Calhoun, Tedeschi, Taku., … Dauhauer (2010)

8月 17, 2013

Cann, A., Calhoun, L. G., Tedeschi, R. G., Taku, K., Vishnevsky, T., Triplett, K. N., & Danhauer, S. C. (2010). A short form of the Posttraumatic Growth Inventory. Anxiety, Stress, & Coping, 12, 127-137. doi: 10.1080/10615800903094273

ここ最近,PTGI(心的外傷後成長尺度)の短縮版であるPTGI-SFについての問い合わせが少しずつ増えているので,短縮版を発表した論文をレビューしておこうと思う.この論文は,私がノースカロライナ大学での研究生活を終えて,ミシガンのオークランド大学に赴任した最初の仕事だったので,よく印象に残っている.PTGIは21項目からなるので,項目数がそこまで多すぎるということはないと思うけれど,当時,私たちの研究グループに所属していた大学院生の何人かが深刻なトラウマを経験された方々を対象にインタビューによる研究を始めていたので,項目数を可能な限り減らしたいという思いはあった.そこで,この論文の第一著者であるDr. Cannが中心となって,これまでに収集したすべてのPTGIデータを一つにまとめ,項目を取捨選択し,新たに調査を行い,短縮版を作って発表した.私の担当部分は主にデータ分析(確認的因子分析等)だった.

  • この論文の目的: PTGIの項目数を21から約半分の10項目まで減らした短縮版を開発すること.その際,21項目を用いた際に拾えた情報量がなるべく減らないよう,そして5つの因子それぞれについてなるべく偏りがないよう項目を選ぶこと.そして,短縮版の信頼性,妥当性を検証すること.
  • 方法: 項目を取捨選択するために用いたデータはこれまでに集めた1351人分のデータ(大人,19歳から70歳)で,取捨選択した後にその10項目のみを使って確認のために新たにデータを集めた際の対象者は186人.
  • 結果: PTGIは,少なくともアメリカ,英語版では5因子あることが多くの研究で発表されてきているので,まずPTGI21項目について因子分析を行って,5つの因子それぞれについて,負荷量が高いほうから2項目ずつ選んだ.そしてその10項目について確認的因子分析を行い,データのあてはまりがよいことが示された.各因子2項目ずつしかないにもかかわらず,信頼性もまあまあオッケーだった.論文では,オリジナルの5因子と短縮版の5因子の相関係数も示しているが,非常に高い値であった.PTGI回答の際のきっかけとなった出来事別にオリジナル21項目を用いた場合の結果と短縮版10項目版を用いた場合の結果を比べて,短縮版でも得られる知見に誤差がほとんどないことを示した.ちなみに,出来事とは,子どもの死,ドメスティックバイオレンス,がん,そして多種多様な出来事を経験した大学生であった.
  • 考察:対象者の負担を少しでも軽くするために,項目数を減らす必要のある研究ではオリジナルのPTGI21項目を使わなくても,その中の10項目を使えば,情報量をほとんど落とさず,PTGの個人差をみることができることが示された.

というわけで,短縮版と言っても,短縮版を0から作りなおしたわけではなくて,もともとの21項目から抜粋して10項目集めているにすぎない.なので,「PTGIの短縮版である,PTGI-SFには日本語版もあります」とは言っているけれど,それは単純にPTGI-Jからこの論文で発表されている該当項目を10抜き出して,「短縮版」としているだけなので,注意が必要だと思う.

ちなみに,私自身は短縮版のみ(つまり10項目だけ)を用いて研究したのは一回しかない.それも日本人の方が対象となった研究ではなくて,ミシガンに来てから2年目くらいに,こちらの付属の大学病院で医師の方々に,日々の臨床から成長の実感があるかどうかを聞いたときだ.この調査では,医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)がアメリカでも深刻な問題になっているので,日々の仕事の中から成長感が見出せていれば,せめてバーンアウトになるのを防げるのではないかと考え,その仮説を検証するために行った研究だ.この論文は現在審査中なので,アクセプトされたらまたここでレビューしたいと思う.

話が前後するけれど,そういうわけなので,私自身が日本語版PTGIの短縮版(PTGI-J-SF)を用いて調査したことはないし,それについての論文を発表したことも今のところ残念ながらない.そのため,日本語版PTGIの短縮版の基本統計量は現在のところ不明である.(けれども,この論文に示してあるようにフルと短縮版の相関が合計の場合も,下位尺度別に見た場合も,どちらも非常に高いので,短縮版の基本統計量がないとは言え,フルの統計量は合計も下位尺度別もあちらこちらに出ているので,それを参考にすることはそんなにおかしなことではないと思う)

念のために,私が今手元にあるデータ(234名の日本人大学生)で短縮版にある10項目を抜き出してその合計得点を算出したところ17.97(標準偏差は9.27)であった.同じデータで,オリジナルの21項目の合計得点は44.30(標準偏差は20.23).両者の相関係数は.94であった.ただし,これだと少し分かりにくいかもしれないので,下位尺度別に合計得点を項目の数で割った平均得点を,短縮版のものとオリジナルのもの両方示しておく.ちなみに短縮版はそれぞれの尺度2項目ずつなので2項目を足して2で割っているけれど,オリジナルは下位尺度によってそれぞれの項目数はまちまちなので,分母もまちまちである.

  • 他者との関係-短縮版は(M = 2.05, SD 1.32); フルだと(M = 2.37, SD = 1.14)
  • 新たな可能性-短縮版は(M = 2.19, SD = 1.48); フルだと(M = 2.30, SD = 1.32)
  • 人間としての強さ-短縮版は(M = 1.82, SD = 1.37); フルだと(M = 1.89, SD = 1.23)
  • 精神性的変容-短縮版は(M = .94, SD = 1.11);フルも(M = .94, SD = 1.11)
  • 人生に対する感謝-短縮版は(M = 2.19, SD = 1.31); フルだと(M = 2.26, SD = 1.26)

精神性的変容はもともと2項目しかないので,短縮版もフルも全く同じになっている.当然だけれど,オリジナルで項目数が最も多い「他者との関係」で,両者のずれが最も大きい.

というわけで,短縮版は21項目のうち,オリジナルの項目番号1, 2, 5, 7, 8, 10, 11, 18, 19, 20を抜き出して構成したにすぎないものだけれども,レジリエンスや,コーピング,ソーシャルサポート,生きがいなどさまざまな変数との関連を見ようとしている研究では項目数が少ないに越したことはないので,この10項目がうまく活用されたらいいなと思う.

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