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Arpawong et al. (2015)

11月 29, 2015

Arpawong, T. E., Sussman, S., Milam, J. E., Unger, J. B., Land, H., Sun P., & Rohrbach.  (2015). Post-traumatic growth, stressful life events, and relationships with substance use behaviors among alternative high school students: A prospective study. Psychology & Health, 30, 475-494. doi: 10.1080/08870446.2014.979171

私は今,大学生の飲酒とPTGに関連した論文を書いている.数年前にその研究計画を立てる際に参考にした南カリフォルニア大学のDr. Milamらの研究グループの最新の論文をレビューしたい.彼らは思春期・青年期のPTG及びHIV感染者のPTGに力を入れている研究グループだ.彼らの研究チームは予防医学・ポジティブ健康心理学を背景に,PTGの経験が問題行動の予防にどうつながるかという視点で研究を重ねてきている.この新しい論文では,薬物予防プログラムに参加した高校生を対象に,参加前(ベースライン)と参加2年後のフォローアップを比べ,PTGが薬物乱用や十代の飲酒を予防する効果があるか検討している.縦断研究で,統計的にベースラインをコントロールした上で,PTGが十代の薬物乱用及び飲酒の予防に効果があると示してくれているので,PTG研究者としては「グッド・ジョブ!サンキュー!」と言いたい論文だ.

  • 問題と目的:十代の子どもの薬物乱用や飲酒のきっかけにストレスの存在があることはよく知られている.だからと言ってストレスを経験した青年が皆,飲酒をしたり薬物乱用したりするわけではない.最近の研究から,ストレスを経験した青年の中には,その経験を自己成長につなげているケースもあることがわかってきた.この現象はPTGと呼ばれている.そこで,本研究では,PTGの経験にはストレス緩衝剤としての役割があるのではないか,つまりPTGがレジリエンスの役割を担って,ストレス後に不健康なコーピング(薬物乱用や飲酒)をするのを予防してくれるのではないかと考えた(英文では,PTG may…serve as a resilience factor that directly promotes congruent behaviors…through a stress-buffering effect… p.477と記載されている).具体的には,人生に大きな影響を及ぼすような非常にストレスフルな出来事を経験したとしてもその経験をきっかけにPTGが体験されていれば薬物乱用や飲酒の頻度が低下するという仮説を検証することが目的である.
  • 方法:12回のレッスンから構成される薬物予防プログラムに参加した平均年齢16.8歳の高校生564名が対象となった.調査は2回行われ,プログラム実施前に参加していたのは合計1676名で,2年後のフォローアップに参加したのはそのうち703名であった.この論文では,その中で過去2年間においては非常に強いストレスを伴うような出来事を経験したと回答した564名を分析対象とした.PTGを測定するにあたっては,PTGIの教示文,回答形式,項目数すべてに若干の変更を加えたオリジナルの尺度を用いた.
  • 結果:マルチレベル回帰分析を行ったところ,仮説は部分的に支持され,PTG得点が飲酒頻度とマリファナ使用,薬物乱用の低下と関連していた.しかし,PTGは喫煙及びハードドラッグ(コカイン・ヘロインなど)とは関連していなかった.次に,ベースラインとフォローアップの薬物得点の差で,全体を4群に分けた(0=今も前も使用していない;1=前は使用していたがやめた,ないしは減らした;2=前と今で変化なし;3=前は使用していなかったが今は使用している,ないしは使用頻度が増えた).そしてこの4群でPTGの差を検討したところ,「3」と分類されたグループは「1」よりもPTGが有意に低かった.
  • 考察:以上より,確かにストレスをたくさん経験している青年の方が,飲酒や喫煙,薬物乱用に手を出す傾向は高いものの,ある一つの出来事をきっかけとしてPTGという成長が自覚されていれば,それらの問題行動は予防されることが明らかとなった.喫煙に関して有意な結果が見られなかった理由としては,喫煙者の人数そのものがかなり少なかったことが挙げられる.またハードドラッグに関して有意な結果が得られなかったのは,その使用に際して別の要因(そういう手に入りにくいドラッグを手に入れることができるネットワークの有無,経済的な理由)が大きいことと,ここ数年のストレスというよりは,幼少期に経験したトラウマや家庭環境がより強い影響を与えているからだろうと考えられる.

以上.

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