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Pat-Horenczyk et al. (2015)

10月 26, 2015

Pat-Horenczyk, R., Perry, S., Hamama-Raz, Y., Ziv, Y., Schramm-Yavin, S., & Stemmer, S. M.  (2015). Posttraumatic growth in breast cancer survivors: Constructive and illusory aspects. Journal of Traumatic Stress, 28, 214-222. doi: 10.1002/jts.22014

PTGの二面性についての研究が盛んだ.PTGには裏の顔,つまりポジティブで良い意味の成長という側面だけではなく,逆に真実にしっかり向き合わない,幻想とも言うようなネガティブな側面があることを論文の中で指摘したのはドイツの研究者Maercker & Zoellner (2004)だ.2004年というともう10年以上前になる.その2004年の論文というのは「Psychological Inquiry」というジャーナルでPTGについての特集が組まれた年にあたる.そこには16ほどのPTGに関する論文が収録されていて,Tedeschi&CalhounのPTGモデルもそこで紹介されている.さて,この二面性は「Janus Face Model(ヤヌスの顔ー前向きと後ろ向きの顔を持つ神ーモデル)」として紹介されたが,それに対して研究者はその後さまざまな反応を示して,「いや,PTGは幻想なんかではない」とかたくなに信じてそれを証明しようとする論文もあれば,「少なくともPTGIで測定しているPTGはすべて幻想でしかない」とわりと極端な主張をしている論文もある.けれども多くの研究者は,まあPTGには両面あるでしょうという感じだ.私自身もその「両面あるでしょう」の立場だし,今日読んだこの論文もまた「両面あるでしょう」という感じだ.けれども彼らの研究の独創的な点は,PTGとコーピングを組み合わせて,PTGの二面性をあぶりだそうとしたところにある.

  • 研究の背景と目的:1994年のDSM-IVに,がんという診断を受けることもトラウマに含まれることが明記され,実際,そう少なくはない割合のがん患者にPTSDがみられることが明らかにされている.けれどもPTG研究からは,がんサバイバーが,がんという診断を受けたことをきっかけに様々な成長を経験していることもまたわかっている.しかしながらPTSD症状とPTGの関係に関しては,いまだにはっきりとした結論が得られていない.その理由にはPTGの二面性が関係しているのではなかろうか.そこでこの研究ではコーピングの概念を適用して,PTGの真の側面(これを著者らは建設的なPTGと呼んでいる)と錯覚に過ぎない側面(これを彼らは幻影のPTGと呼んでいる)を検討したい.具体的には,真の側面は,PTGI得点の向上にプラスしてポジティブなコーピングがより使われるようになりネガティブなコーピングが使われなくなった場合を考える.幻の側面は,PTGI得点のみが向上していてコーピングにはなんら改善がもたらされなかった場合があてはめられる.我々は,乳がんサバイバーのPTGとコーピングの向上を目的とした「レジリエンスを高める介入プログラム」を開発しているので,本研究で,その介入プログラムに参加したグループと参加していないグループを対象にして,6ヵ月後にPTGとコーピングがどのように変化したかを見ることでPTGの両面を検討したい.
  • 方法:合計287名にアプローチして,155名が参加に同意した.けれども途中で何人か参加を取りやめたこともあり,最終的には94名の乳がんサバイバーの方が対象となった.そのうち49名が,1週間1回,合計8回のセッションからなる介入プログラムに参加して,介入前と介入後6ヶ月の時点で調査に回答した.残りの45名は介入プログラムには参加せず,ベースラインと6ヵ月後の二度調査に回答した.調査に含まれていたのは,PTSD症状を査定する尺度,情動調整の尺度(これを用いてポジティブなコーピングとネガティブなコーピングを測定),そしてPTGIである.
  • 結果:介入群・コントロール群問わず,調査協力者の半分以上が6ヵ月後の時点でベースライン時点よりも高いPTGを報告していた.具体的には介入群の28名,コントロール群の24名においてPTGI得点が6ヵ月後に上昇していた.この合計52名のうち39名(したがって75%,介入群のうち25名+コントロール群のうち14名)が,いわゆる「建設的なPTG」を経験していた.すなわちPTGI得点とコーピング,両方の向上を示していた.ということは,残りの15%が「幻影のPTG」を経験していたと言える.割合から見ると,PTGとコーピング両方の高まりは,介入群に顕著であり,この「建設的なPTG」は介入群の89.3%,コントロール群の56.3%にみられた.
  • 考察:本研究の結果,この論文で紹介されている「レジリエンスを高める介入プログラム」の有効性が示唆された.このプログラムがこのように有効であった理由として考えられるのは,特に乳がんサバイバーの場合,週1回のプログラムに継続的に参加することでネットワークが広がり,サバイバー同士のサポートが強まったことが一因であろう.また,この介入では症状の緩和に焦点を当てるのではなく,コーピングの強化とPTGの促進に焦点を当てたこともその理由であろう.著者らは,この論文でPコーピングの変化を組み合わせることで,PTGの二面性を検討したことに意義を認めつつも,将来的には何らかの行動面での変化をもってさらにPTGの二面性を見ていくことで,よりPTGの妥当性を検証することができるだろうと述べている.

以上

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