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McCormack, Hagger, & Joseph (2011)
McCormack, L., Hagger, M. S., & Joseph, S. (2011). Vicarious growth in wives of Vietnam veterans: A phenomenological investigation into decades of “lived” experience. Journal of Humanistic Psychology, 51, 273-290. doi: 10.1177/0022167810377506
サバティカルで日本に行くことが正式に決まった.来年1月から8月のお盆明けまで早稲田大学にお世話になる.サバティカルの間は授業やその他の委員会活動(会議など)がないので,研究のみに没頭できる貴重な機会となる.そのため春先からずっと研究計画を練ってきた.この研究案の中で,今回はじめてパーソナリティのHEXACOモデルを取り入れることになった.そのメインの理由はHの要素(Honesty-Humility:正直さー謙遜さ)にある.PTG研究では,自分で自分を振り返って,成長したかどうかを自分なりに判断するという,いわゆる自己報告式のアプローチが主流だけれど,一部の研究者は,そういう自己報告ではなくて,本人の「その人となり」,つまりパーソナリティが根本的にいい方向に変わったかどうかでPTGを判断すべきだと主張している.例えば,自分さえ良ければいい,嘘をついても,人をだましても,自分がほしいものを手に入れることができれば問題ないという性格だった人が,ある出来事を経験したことによって大きく変わり,正直者となり,たとえ自分が損な役回りを引き受けることになったとしても人を利用するなんてことはないという性格に変わることが仮にあったとしたら,そこではじめてそれがPTGだろうという主張だ.でもここで難しいのは,どういう性格になったらPTGと呼べるかが人によって異なることだ.「正直な性格になる」ことがイコールPTGではない(と思う).そこで,できるだけいろんなPTG論文を読んで,それぞれの研究者がPTGをどうとらえているのか情報収集している.そんなときにこの論文を見つけた. 続きを読む…
Hefferon, Grealy, & Mutrie (2010)
Hefferon, K., Grealy, M., & Mutrie, N. (2010). Transforming from cocoon to butterfly: The potential role of the body in the process of posttraumatic growth. Journal of Humanistic Psychology, 50, 224-247. doi: 10.1177/0022167809341996
こ れは,イギリスのポジティブ心理学研究者によるPTGの質的データを元にした論文.私自身は,PTGをポジティブ心理学の一部だと位置づけて研究しているわけではないので,ポジティブ心理学を研究している学者によって語られるPTGにはとても興味がある.同じ現象を研究しているにもかかわらず,引用する論文も違う上に,そこに横たわる価値観やとらえ方などが大きく違うので,とても新鮮な感じがする.この論文は,それに加えて,タイトルにもとても興味を持った.「まゆ(さなぎ)から蝶への転換:PTGプロセスにおいて身体が持つ役割について」.私はまもなく風間書房から2冊目の本を出させていただく予定だけれど,その中で,「人はさなぎから蝶になったという結果をもって成長の実感を抱くことが多いが,さなぎの時にも成長が止まることはない」と論じたばかりだ.だから,このタイトルにはとても興味を持った.しかも,論文を読んでみて,なぜ乳がんサバイバーの方たちの語りが「さなぎから蝶へ」という比喩になるのか,とてもよく納得できた.さらに,心理学者として,つい「心(認知や信念,感情)」にばかり目が向いてしまうけれど,この論文では「身体」が果たす役割について論じていて,そういう点からも,この論文はとても貴重だと思う.