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McCormack, Hagger, & Joseph (2011)

9月 28, 2015

McCormack, L., Hagger, M. S., & Joseph, S.  (2011). Vicarious growth in wives of Vietnam veterans: A phenomenological investigation into decades of “lived” experience. Journal of Humanistic Psychology, 51, 273-290. doi: 10.1177/0022167810377506

サバティカルで日本に行くことが正式に決まった.来年1月から8月のお盆明けまで早稲田大学にお世話になる.サバティカルの間は授業やその他の委員会活動(会議など)がないので,研究のみに没頭できる貴重な機会となる.そのため春先からずっと研究計画を練ってきた.この研究案の中で,今回はじめてパーソナリティのHEXACOモデルを取り入れることになった.そのメインの理由はHの要素(Honesty-Humility:正直さー謙遜さ)にある.PTG研究では,自分で自分を振り返って,成長したかどうかを自分なりに判断するという,いわゆる自己報告式のアプローチが主流だけれど,一部の研究者は,そういう自己報告ではなくて,本人の「その人となり」,つまりパーソナリティが根本的にいい方向に変わったかどうかでPTGを判断すべきだと主張している.例えば,自分さえ良ければいい,嘘をついても,人をだましても,自分がほしいものを手に入れることができれば問題ないという性格だった人が,ある出来事を経験したことによって大きく変わり,正直者となり,たとえ自分が損な役回りを引き受けることになったとしても人を利用するなんてことはないという性格に変わることが仮にあったとしたら,そこではじめてそれがPTGだろうという主張だ.でもここで難しいのは,どういう性格になったらPTGと呼べるかが人によって異なることだ.「正直な性格になる」ことがイコールPTGではない(と思う).そこで,できるだけいろんなPTG論文を読んで,それぞれの研究者がPTGをどうとらえているのか情報収集している.そんなときにこの論文を見つけた.

  • 研究の背景及び目的:PTG研究の多くはPTGIという尺度に頼っている.しかし尺度を用いる研究(Nomothetic research:普遍的法則を見つけることを志向する研究)では,個々人に特有のPTGの内容が抜け落ちてしまう可能性が高い.そこで本研究では質的データを分析し,長期に渡るトラウマからどのような内容のPTGが経験されているかについて検討する.特に本研究では,自分自身に起きたトラウマをきっかけとしたPTGではなく,パートナーが経験したトラウマをきっかけとしたPTGに焦点を当てる.このタイプのPTGをVicarious PTG(代理のPTG)と呼ぶ.本研究ではVicarious PTGを「パートナーのトラウマ経験に曝されたことをきっかけとして,自己や世界観を,ポジティブな方向に再定義するプロセス」と定義する.
  • 対象者:PTSDの診断を受けたベトナム戦争退役軍人の夫を持つ妻4名(56歳から65歳)が半構造化面接に参加した.対象となった4名の妻の中に,PTSDの診断を受けたものはいなかった.
  • 方法:一人当たり1時間半から2時間の面接を行った.面接内容は録音され,逐語に起こされ,IPA(Interpretative Phenomenological Analytic) アプローチという手法で分析された(私はこの手法に詳しくないが,論文のP.278には13段階に渡る分析プロセスが表としてまとめられていて,分かりやすい).
  • 結果:面接データを分析した結果,大きく二つのテーマが抽出された.
    • 一つ目は「戦争というトラウマ体験に間接的に曝されたことによるストレスを抱えて生きる」というものであった.特筆すべきは,妻にとって戦争体験が様々な苦しみ(孤独,恐怖,混乱,夫を支えるべき自分とふがいない自分の狭間で無力感を覚えることなど)の後に,戦争が,「夫の」戦争ではなく,「夫婦の」戦争だと知覚されていたことだ.
    • 二つ目は「代理のPTG」,つまり,戦争をきっかけとして何らかの人格的な成長があったという内容だ.中でも中心的に見られた内容は,苦しみに引き続いて,過去を変えることはできないという事実を受け入れ,自分に正直になるという変化であった.彼女達のPTGは困難に打ち克ったといったような達成感が前に出るものではなく,謙虚な内容であり,例えば「多くを学んだけれど,今もまだ学びの途中にある」といった声に代表される.この「謙虚な受容」に加えて「愛情」「感謝の気持ち」「共感」などがPTGの内容として見出された.
  • 考察:PTG研究において,現在もなお,トラウマ後の成長をどう定義するかという点において共通理解は得られていない.したがって尺度のみに頼ってしまうと,尺度に含まれていない内容が自動的に抜け落ちるので,質的データと量的データの両方からPTG研究に取り組むことが望ましいだろう.また先行研究では,トラウマからの時間経過とPTGとの関連について一貫した知見は得られていない.本研究でも,非常に長期に渡るトラウマからのPTGを面接によって問うたが,一つ目のテーマ「戦争に関連したストレス」から二つ目のテーマ「代理のPTG」へと移るポイントやタイミングは明らかにすることができなかった.しかし面接の中では,「時間の経過」に意味がありそうな内容も多少語られていたので,次の研究では,その変化のタイミングやきっかけを探りたい.

以上.

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