Levine, Laufer, Hamama-Raz, Stein, & Solomon (2008)
Levine, S. Z., Laufer, A., Hamama-Raz, Y., Stein, E., & Solomon, Z. (2008). Posttraumatic Growth in Adolescence: Examining Its Components and Relationship with PTSD. Journal of Traumatic Stress, 21, 492-496. doi: 10.1002/jts.20361
PTG(外傷後成長)とPTSD症状の間の曲線的関係について検討している論文を今もう一度整理していて,そんな中でたまたまみつけた論文がこれ.少し前に,同じJournal of Traumatic Stressに2009年に発表されたKleim & Ehlersの論文をレビューしたけれど,なんとその1年前にLevineらが両者の逆U字関係についてこの論文を出していた!Kleim & Ehlersの論文はいまだに注目を浴びているのに,なぜ見落としていたんだろう.サンプル数も多いのに不思議だ.タイトルかもしれない.Kleim & Ehlersの論文はタイトルに「曲線関係」が入っていたから.でも今回この論文を読んでみて,おもしろい特徴がいくつかあることに気づいた.この論文はPTGIのヘブライ語版を使っていて,PTGIの探索的因子分析を載せている.しかも調査対象は,日本における中学生から高校1年生くらいまでの男女.思春期を対象にした研究はあまり多くないからとても参考になる.
- メインの結果-PTGIとPTSD症状は逆U字型関連にある.探索的因子分析の結果は2因子構造.Outward bound growth と Intrapersonal growthと名づけられている.Outward bound growthの因子は,オリジナルの「新たな可能性」「人間としての強さ」にあたる項目がメインとなっていて,Intrapersonal growthの因子は,「人生に対する感謝」と「他者との関係」,そして「精神性的変容」に関する項目がメインとなって構成されている.
通常,PTGIは6件法(0から5点)で回答するようになっていて,21項目あるので,合計得点は0から105になる.けれども,この論文では,回答形式を変えて,4件法にしている.私がDr. Kilmerらと作成した子ども版のPTGIも4件法.そういうふうにした方が回答者にとってはやさしいんだと思う.けれども大変な出来事をきっかけとして,その前と比べてどれほど自分が成長したと感じているかを問う項目において,6件法とか4件法はあてはまりが悪いという意見もある.つまり,ある研究者は,成長というのはもう成長したという自覚があるかないかの2者択一ではないかという意見だ.私は今書いている論文でデータを分析するにあたり,共同研究者と一緒に,0から5点という範囲で,たとえば0は「成長の自覚なし」で,1から5は「程度の差こそあれ成長の自覚あり」というふうに再コード化して分析してみたり,また0と1で一つのグループ,2,3で一つのグループ,4,5で一つのグループと6件法を3つにわけてこちらもまた名義尺度のように再コード化して分析してみたりしている.この秋にフィラデルフィアで開かれるISTSSでPTGのシンポジウムを企画しているのでそこで何か発表できるように準備できればいいなと思う.