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Taku (In Press)

2月 23, 2013

Taku, K. (2012, online first publication). Posttraumatic Growth in American and Japanese men: Comparing levels of growth and perceptions of indicators of growth. Psychology of Men and Masculinity. doi: 10.1037/a0029582

自分が書いた論文についてもレビューしてみようと思う.これは単著の論文.私にとって単著の論文は英文ではこれが2本目になる(1本目は,Personality and Individual Differencesに投稿した論文).アメリカの大学では,テニュア制度があり,私たちアシスタントプロフェッサーは,共同研究に加えて,単独の研究も求められる.PTG研究の中心は,どのような条件のもとでPTGが体験されるのかという道筋の解明(予測変数,媒介変数の同定)と,PTGがその後の健康行動や精神的健康にどのような影響を及ぼすのかという作用の解明,そして結局のところどのような介入がPTGにとって効果があるのかという議論に集約されるように思う.ただし,それを可能にするためにはPTGの定義や測定がどうしても不可欠なので,PTGとレジリエンスの関係やPTGとポジティブ・イルージョンの関係など,関連概念の研究もとても重要で,そういう研究が今多くなされていると思う.そういった研究は主流だからこそ,共同研究という形がいいように思うけれど,そういう研究をしながら,私自身考えているのは,PTGIを用いてPTGの研究をしたり発表をしたりすればするほど,PTGIに含まれている項目が「トラウマ後の人間としての成長」の例ですよというメッセージを送り続けることになるというジレンマだ.私は,PTGIを使い続けたとしても,使い方によってはそのメッセージを変えることができるんじゃないかと考えているし,成長の内容は人によって文化によって異なっていいことを伝えることはできると思っているので,この論文でそれを示そうとした.ちなみに,成長の内容は性別によっても異なるため,その部分をすっきりさせるために,この論文では男性のみに焦点を当てて,日本の男性が考える成長とアメリカの男性が考える成長の違いを検討した.

  • 仮説-(1)PTGI合計得点のみに注目すれば,アメリカの男性の方が得点は高いだろう.(2)PTGIの各領域を別々にみてみると,日本人男性の方が高いものもあるだろう.(3)PTGIの得点はどのような出来事がきっかけとなったかにもよるだろう.(4)PTGIの21項目はすべてが同じレベルで成長の指標となっているわけではなく,ある内容は日本人にとってよい成長指標となっており,別の内容はアメリカ人にとってよい成長指標となっているだろう.
  • 方法ーアメリカ人大学生(119名)と日本人大学生(113名)に,過去5年間で最もつらかった出来事について書いてもらって,それをきっかけとしてPTGを経験したかどうかについて,PTGIに回答してもらった.またPTGIの教示を変更して,それぞれの項目がどの程度「人間としての成長」をあらわしているかどうかについて回答してもらった.
  • メ インの結果-(1)仮説どおり,アメリカの男性の方が合計得点は10点近く高かった(アメリカ人男性の平均は46.65,標準偏差が22.83.日本人男性の平均は37.85, 標準偏差は20.72).PTGIの合計得点は0から105なので,日本人男性の平均はかなり低めだった.(2)PTGIの各領域を別々にみてみると,5領域のうち,2領域(他者との関係と新たな可能性)では文化差がなかった.残りの3領域はアメリカ人男性の方が得点が高かった.「他者との関係」は日本人男性の方が高いんじゃないかなと仮説を立てていたけれどそれは支持されなかった.「人間としての強さ」は絶対にアメリカ人の方が高いだろうと思っていたら,そのとおりだった.(3)きっかけとなった出来事別に見てみると,大学入試に失敗して浪人した等のキャリアや学業に関する出来事が過去5年で一番つらかったと回答した人は,「新たな可能性」領域と「人間としての強さ」のPTG得点が他の人より高かった.また,死別を経験した人は,「人生に対する感謝」の領域のPTG得点が他の人より高かった.(4)最後に,PTGIの内容については,アメリカ人では「人間としての強さ」の領域に属するような項目がPTGのよい指標だという結果であったのに対して,日本人では「他者との関係」の領域に属するような項目がPTGのよい指標だという結果であった.

日米の文化差について一番単純な図式は,「個人主義ー集団主義」の違いだと思う.文化心理学の教科書などにも,これは絶対に出てくる.でも私はあまのじゃくなところがあるので,アメリカは個人主義とは言ったって,集団主義の部分もたくさんあるじゃないかとか,日本は集団主義と言ったって,個人主義の部分もたくさんあるじゃないかなどといつも考えている.けれども,実際にデータを取ってみるとやっぱり,この「個人主義ー集団主義」が根強くて,驚かされる.今もまた別の調査で,あなたにとって成長とは何ですかという問いを投げかけているけれど,アメリカ人の回答の多くは,「自分が強くなること」「自分に自信を持つこと」「自分にプライドを持つこと」「自分に揺るがない信念をもつこと」など,自分が頻繁に出てくるけれど,日本人の回答の多くは,「他の人から認められること」「他の人にやさしくできること」「他の人の気持ちがわかること」「場の空気を読めること」など他の人とかかわることが頻繁に出てくる.この違いをトラウマ研究全体や介入研究,理論モデル構築のなかでどんなふうに取り入れていったらいいかが次の課題だと思う.

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