ホーム > PTGの文献・出版物 > Calhoun, Cann, Tedeschi, & McMillan (2000)

Calhoun, Cann, Tedeschi, & McMillan (2000)

10月 16, 2012

Calhoun, L. G., Cann, A., Tedeschi, R. G., & McMillan, J. (2000). A correlational test of the relationship between posttraumatic growth, religion, and cognitive processing. Journal of Traumatic Stress, 13, 521-527. doi: 10.1023/A:1007745627077   

PTGI(外 傷後成長尺度)と認知プロセスの関連を見た最初の論文.このJournal of Traumatic Stressというジャーナルに,テデスキーは2012年現在で6本(そのうち5本はカルホーンも共著,でもってそのうち1本は私も共著)論文を出してい て,この2000年の論文が,1996年のものに引き続く2本目.PTGは,出来事から直接おきるものではなく,出来事が起こった後の心理的もがきの結果 起きるということを強調する流れを作ったという意味で,この論文は大きな意味を持つように思う.この論文では,心理的もがきのひとつの側面として,2種類 の認知プロセスを区別して,それとPTGの関連をみている.

  • 尺度-1996年の論文で開発したPTGIに加えて,2種類の認知 プロセスをみるための14項目からなる「Rumination Scale」を用いている.この尺度は7項目が,出来事直後の熟考について聞いていて,残り7項目が,調査時点での熟考について聞いている.その7項目の うち3項目は侵入的熟考について尋ねる内容で,例えば「その直後,考えたくないと思っていても,その出来事のことばかりを考えていた」(調査時点での熟考 について尋ねる項目のほうは,「最近,考えたくないと思っていても,その出来事のことばかりを考えている」).そして7項目のうち残り4項目は意図的熟考 について尋ねる内容で,例えば「その直後,この出来事の結果,自分の人生には意味や目的があるのかについて,自問自答していた」となる.
  • 結果-PTGI合計得点は,出来事直後の熟考とも,調査時点つまり最近の熟考とも,正の相関を示していた.

こ の論文がきっかけとなって,熟考には最低2種類あること(どうも以前はruminationというと画一的にネガティブなものだと考えられていたよう), しかも,出来事直後に侵入的思考が生じるのはその起きた出来事の衝撃が強ければ強いほど自然なことだ けれど,時間と共に,徐々に意味の探索を含めた意図的熟考へと質的に変化を遂げるのが望ましいこと,PTGとの関連でいえば両者ともに正の相関を示すこ と,の3つについて,この後の追試的な研究が増えていったように思う.

ここで使われているRumination Scaleは,私も日本語に訳してPTGIとの関連をみるために使わせてもらったし,他の研究グループも使っているけれど,意図的熟考を測定するほうの項 目の内容にやや問題点があって,その後改訂され,2011年に,「Event Related Rumination Inventory」という名前で発表されている.こちらの日本語版はまだない.ちなみに,こういう単相関のみの論文がJoTSに載っているのを見ると,ここ10年でJoTSはだいぶ変わったなあと思う.インパクトファクターが高くなって,こういう論文はもうレビューにもまわしてもらえないんじゃないかなと思う.いろんな意味で貴重です:)

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。