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Frazier, Tennen, Gavian, Park, Tomich, & Tashiro (2009)

11月 26, 2012

Frazier, P., Tennen, H., Gavian, M., Park, C., Tomich, P., & Tashiro, T. (2009). Does self-reported posttraumatic growth reflect genuine positive change? Psychological Science, 20, 912-919. doi: 10.1111/j.1467-9280.2009.02381.x

PTG研究が始まった1996年以降で,最も影響力の強い論文のひとつがこれだと思う.タイトルからして,「自己報告によるPTGはプラスの変化を本当に反映しているのだろうか?」反語で(いや,反映していないだろう・・・)というメッセージがこめられている.これがまだin press,つまり印刷中の頃,ある学会で私たちがシンポジウムをしているときにフロアから「こういう論文がPsychological Scienceにアクセプトされた,もうすぐ出る」という話が出され,それにどう対応するつもりかと問われ,「いや,読んでないからまだわからない」というのが精一杯だったのが思い出される.内容もさることながら,Psychological Scienceというインパクトファクターの高いジャーナルにPTGが出ること自体少ないので,いろいろな意味で本当に影響力がある.

  • 研究方法:PTGI21項目に加えて,C-PTGI(Current Standing version of the PTGI:つまり,現在の状況に焦点を当てたPTGI)を用いている.この尺度は,21項目それぞれについて言い回しを変えることで,ここ2週間の状態について答えるように工夫されている.例えば,「自分の命の大切さを痛感した」というPTGIの項目に対して,C-PTGIでは「ここ2週間,私は自分の命の大切さを痛感している」となり,縦断で聞けるようになっている.この二つの尺度以外に,PTGIの5つの領域に対応したそれぞれの尺度や苦痛(ディストレス)の程度を測定する尺度などが用いられている.大学生を対象としたオンライン調査ということもあり,第一回目の調査時点では1000人以上の方が参加している.けれども,この論文ではその8週間後の第二回目調査に参加した人で,かつこの8週間の間にトラウマを経験していた人ということで随分Nは少なくなっている.
  • 結果:内容が盛りだくさんで,とてもまとめられないけれど,やはりメインは,PTGIの5つの領域に対応したそれぞれの尺度の第一回調査と第二回調査の差異であらわされる「実際の成長」とPTGIによって測定された「自己認知による成長」には関連がみられなかったということだ.それから,PTGIによって測定されたほうの成長は,ディストレスの増加(第二回調査の時の方が不安等の症状が高いこと)に関連していたが,彼らによるところの「実際の成長」は逆にディストレスの低下と関連していた.さらに,PTGIで測定した成長は,ポジティブな再解釈というコーピングと関連を示していた.

というわけで,この論文が大きなきっかけとなって,PTGIを用いた自己報告による成長は,実際の成長,本物の成長をあらわしていないのではないか,自己報告による成長は幻,あるいはただコーピングとしてそう考えているだけ(ものの見方の変化)にすぎないのではなかろうかという議論が発展していった.もちろんこの論文が出るずっと前から,このような議論はあったけれど,この論文がやっぱり大きな起爆剤になったように思う.

私は個人的には,第二回調査時点でのあり方から第一回調査時点でのあり方を引き算して,それが「実際の成長」を示しているというのには賛成できない.というのも,第一回調査時点では,「本当に命の大切さを実感していた」けれど,大変なことがおきて,その意味について考えたり,それとなんとかもがくなかで,いろいろな人と話をしたりして,「ああ今,本当に命の大切さを実感している」となることはおおいにあるわけで,この場合,もし最初が5点で第二回目も5点なら,引き算すると0点,つまり,実際の成長はないと判断されることになる.だから,この論文の結果について私はすべてをなるほどと思っているわけではないけれど,でもとても重要な課題を突きつけてくれたという意味で,私にとってもPTG研究全体にとっても本当に大事な論文だと思う.このほぼ同じグループがつい最近もう一本論文を出したので,次はそれをレビューできたらいいなと思う.

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