アーカイブ
Frazier, Tennen, Gavian, Park, Tomich, & Tashiro (2009)
Frazier, P., Tennen, H., Gavian, M., Park, C., Tomich, P., & Tashiro, T. (2009). Does self-reported posttraumatic growth reflect genuine positive change? Psychological Science, 20, 912-919. doi: 10.1111/j.1467-9280.2009.02381.x
PTG研究が始まった1996年以降で,最も影響力の強い論文のひとつがこれだと思う.タイトルからして,「自己報告によるPTGはプラスの変化を本当に反映しているのだろうか?」反語で(いや,反映していないだろう・・・)というメッセージがこめられている.これがまだin press,つまり印刷中の頃,ある学会で私たちがシンポジウムをしているときにフロアから「こういう論文がPsychological Scienceにアクセプトされた,もうすぐ出る」という話が出され,それにどう対応するつもりかと問われ,「いや,読んでないからまだわからない」というのが精一杯だったのが思い出される.内容もさることながら,Psychological Scienceというインパクトファクターの高いジャーナルにPTGが出ること自体少ないので,いろいろな意味で本当に影響力がある. 続きを読む…
Dibb (2009)
Dibb, B. (2009). Positive change with Meniere’s disease. British Journal of Health Psychology, 14, 613-624. doi: 10.1348/135910708X383598
イギリスの心理学者,Dr. Dibbの論文.PTGの研究では,Growthがおきるきっかけとなる出来事をどう特定するかが難しい.Post-traumatic Growthという名前の構成概念なので,Growthは当然トラウマの後に起きるものだと概念化されている.けれども,2004年のTedeschi&Calhounの論文をはじめとして,あちこちで,PTGは狭義のトラウマのみがきっかけとなって生じるものではなく,より広く何らかのストレスを伴うような出来事,いいにしろ悪いにしろ衝撃的な出来事など本当にいろいろな内容の出来事がきっかけとなり得ることが示されている.私が以前PTGI-Jを使った論文を投稿した際も,査読の中に,「PTGはトラウマから起きると概念化されているのに,長期にわたる介護の後の死別,いじめ,両親の離婚等「トラウマ」とは呼べないような出来事が含まれている.これはどういうことなのか説明するように」といったコメントがあった.Dr. Dibbによるこの論文では,比較的慢性のメニエール病と診断された300名あまりの人が対象となっていて,一過性でなくストレスがずっと続くような場合にもPTGが起き得るということが示されていて,しかも下位尺度別のPTGI平均得点が載っているので,とても参考になる. 続きを読む…
Nightingale, Sher, & Hansen (2010)
Nightingale, V. R., Sher, T. G., & Hansen, N. B. (2010). The impact of receiving an HIV diagnosis and cognitive processing on psychological distress and posttraumatic growth. Journal of Traumatic Stress, 23, 452-460. doi: 10.1002/jts.20554
古いJoTSの論文を2本レビューしたので,今日は比較的新しいものを選んでみた.やっぱりこうして比べてみると,見た目も違うし,データ分析も潜在変数を使ってのモデル検討など,かなり洗練されている.この論文では,HIV/AIDSの診断を受けて少なくとも1年以上は経過している人112名が対象となっている.2000年のカルホーンの論文で発表された「Rumination Scale」の改訂版を用いて,2種類の認知プロセスとPTGI(外傷後成長尺度)の関係をみたもので,私の2008年の論文もたたき台として引用されている.2000年のカルホーンらのJoTS論文では,熟考の内容を,侵入的熟考と意図的熟考に分けているにもかかわらず,分析では結局ひとつにまとめてしまって,出来事直後の熟考と調査時点(最近)の熟考の二つにわけて分析しているので,なんともったいない(そうはいっても,意図的熟考の内容がかなりPTGIで測定しているものと重複していたので,しょうがないのかなあ)という感じがしたけれど,そういう部分がこの論文ではきちんとわけてとらえられ,議論されているので,研究としてかなり前進している感じがする. 続きを読む…
Calhoun, Cann, Tedeschi, & McMillan (2000)
Calhoun, L. G., Cann, A., Tedeschi, R. G., & McMillan, J. (2000). A correlational test of the relationship between posttraumatic growth, religion, and cognitive processing. Journal of Traumatic Stress, 13, 521-527. doi: 10.1023/A:1007745627077
PTGI(外 傷後成長尺度)と認知プロセスの関連を見た最初の論文.このJournal of Traumatic Stressというジャーナルに,テデスキーは2012年現在で6本(そのうち5本はカルホーンも共著,でもってそのうち1本は私も共著)論文を出してい て,この2000年の論文が,1996年のものに引き続く2本目.PTGは,出来事から直接おきるものではなく,出来事が起こった後の心理的もがきの結果 起きるということを強調する流れを作ったという意味で,この論文は大きな意味を持つように思う.この論文では,心理的もがきのひとつの側面として,2種類 の認知プロセスを区別して,それとPTGの関連をみている. 続きを読む…
Tedeschi & Calhoun (1996)
Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (1996). The Posttraumatic Growth Inventory: Measuring the positive legacy of trauma. Journal of Traumatic Stress, 9, 455-471. doi: 10.1007/BF02103658
PTGI(外傷後成長尺度)を用いた最初の学術論文.PTGというキーワードがタイトルに含まれている最初の論文なので,引用率が高い.この論文は3つの研究から構成されている.
- 研究1-先行研究等のレビューから集めた34項目をもとに探索的因子分析(バリマックス回転)を行い,最終的に5因子21項目に絞った過程についてまとめてある.信頼性のチェックが主な目的なので,内的整合性と再検査信頼性について報告されていて,結果はほぼ問題なし(3項目しかない「人生に対する感謝」因子でアルファが.67とちょっと低め).
- 研究2-PTGIの妥当性のチェックが目的なので関連がありそうないろいろなパーソナリティー関連の尺度との相関係数を見ていて,例えば,Marlowe-Crowneの尺度による社会的望ましさとPTGI合計得点の間は無相関という結果が得られている.また,LOTで測定された楽観性とPTGIの間は,合計得点及び全下位尺度で弱い正の相関.
- 研究3-構成概念妥当性のチェックが目的.トラウマを経験した群としていない群のPTGI得点を比較している.結果,トラウマを経験した群でPTGIが有意に高かった. 続きを読む…