Taku (2014)

4月 19, 2014 コメントは受け付けていません

Taku(2014)悲しみから人が成長するとき:PTG (Posttraumatic Growth)」を,2014年3月31日,風間書房から出版させていただきました

― 「はじめに」から一部抜粋 -

PTGとは苦しみをきっかけとして経験される人間としての成長,たったこれだけのことなのですが,それがどんなふうにして起きるのか,何がきっかけになってもたらされるのかなど,たくさんの疑問があります.

私は,人は,「なぜこんな思いをしてまで自分は生きていなければならないのか」,「やっと寝たと思ったら,悪夢を見て目が覚める」,「なぜあの時そうしなかったのか」,そして「なぜあの時ああしたのか」.気持ちの持って行き場がなく,後悔と絶望しかないと思うほどに,つらく苦しい経験をしてなお精神的な成長をとげることがある,ということに魅了され,2000年からこのテーマで心理学の研究をはじめました. 続きを読む…

Roepke (2013)

3月 30, 2014 コメントは受け付けていません

Roepke, A. M. (2013). Gain without paints? Growth after positive events. Journal of Positive Psychology, 8, 280-291. doi: 10.1080/17439760.2013.791715

前回,PTG に関連して,PTDという略語があると書いた.PTGとPTDは,PT(Posttraumatic)の部分が共通していることからわかるように,両方とも,トラウマを引き起こす可能性がある出来事をきっかけとした心理的な変化を指すという点で共通している.そして違いは,3つ目のアルファベットで,「G」つまりGrowth(成長)というふうに望ましい方向への変化を示すのか,「D」,Depreciation(下落)というふうに悪い方向への変化を示すのかにあった.実はPTGに関連して,PEGという略語もある.この論文がそのPEGを提唱したものである.PTGとPEGでは「Post」の部分と「Growth」の部分が共通している.つまり,ある出来事をきっかけとした人格的成長を示すという点で共通している.違うのは真ん中の部分.PTGは「T」,つまりトラウマを引き起こす可能性があるようなストレスフルな出来事がきっかけとなっているが,PEGは「E」,つまり快感や喜びをもたらすような「Ecstatic(恍惚となるような)」出来事がきっかけとなる.PTSS, PTG, PTD, PEG,そして私が明日出版の本の中でふれたPPTG,となんだかふざけているみたいに見えるけれど,人が人生の中で節目となるような大きな出来事を経験した際,それにどのように反応し,対処してゆくのか,人として,どう成長・進化してゆくのかということをいろいろな観点で説明しようとしているという点では皆共通していると思う.

Cann, Calhoun, Tedeschi, & Solomon (2010)

2月 23, 2014 コメントは受け付けていません

Cann, A., Calhoun, L. G., Tedeschi, R. G., & Solomon, D. T. (2010). Posttraumatic growth and depreciation as independent experiences and predictors of well-being. Journal of Loss and Trauma, 15, 151-166. doi: 10.1080/15325020903375826

PTGに関連して,PTDという略語がある.PTDを知っていたら,かなりマニアだと思う.好奇心から,「2014年2月の今日の時点で,PsycINFOでPTDをキーワードに入れたら,どれくらいの文献がヒットするかな?5本くらいかな?」と思って調べてみたら,なんと139もヒットした!一瞬びっくりしたけれど,もちろんそんなはずはなくて,よくみてみると,PTDと略されている言葉にはいろいろあるみたい.例えば「Perceived Taste Disturbance(本人によって認識されている味覚異常)」もPTDだし,「Preterm Delivery(早産)」もPTDと略すらしい.なので,PTDと言えば「Posttraumatic Depreciation – つまりGrowth(成長)じゃなくてDepreciation(下落).PTDとはPTGの逆で,トラウマに引き続いて,PTGと同じ5領域の内容で逆にネガティブな方向に変わること」しかないと思っていた私はやっぱりマニアだと思う.で,再度,Posttraumatic Depreciationと全部入力して文献検索してみると,4本出てきた.まあ,そんなものだろう.これは,PTGIが広く使われるようになるにつれて,PTGIにはポジティブな方向の変化しか含まれていないため,回答に偏りが生じているのではないかとか,逆方向の変化も問うた方がいいのではないか,などの批判が出てきたため,PTG研究室のメンバーが,それならと,既存の21項目それぞれに対して逆向きの項目を考え,21項目×2=42項目版(PTGI-42)を作ったのがきっかけになっている.

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Hefferon, Grealy, & Mutrie (2010)

2月 2, 2014 コメントは受け付けていません

Hefferon, K., Grealy, M., & Mutrie, N. (2010). Transforming from cocoon to butterfly: The potential role of the body in the process of posttraumatic growth. Journal of Humanistic Psychology, 50, 224-247. doi: 10.1177/0022167809341996

こ れは,イギリスのポジティブ心理学研究者によるPTGの質的データを元にした論文.私自身は,PTGをポジティブ心理学の一部だと位置づけて研究しているわけではないので,ポジティブ心理学を研究している学者によって語られるPTGにはとても興味がある.同じ現象を研究しているにもかかわらず,引用する論文も違う上に,そこに横たわる価値観やとらえ方などが大きく違うので,とても新鮮な感じがする.この論文は,それに加えて,タイトルにもとても興味を持った.「まゆ(さなぎ)から蝶への転換:PTGプロセスにおいて身体が持つ役割について」.私はまもなく風間書房から2冊目の本を出させていただく予定だけれど,その中で,「人はさなぎから蝶になったという結果をもって成長の実感を抱くことが多いが,さなぎの時にも成長が止まることはない」と論じたばかりだ.だから,このタイトルにはとても興味を持った.しかも,論文を読んでみて,なぜ乳がんサバイバーの方たちの語りが「さなぎから蝶へ」という比喩になるのか,とてもよく納得できた.さらに,心理学者として,つい「心(認知や信念,感情)」にばかり目が向いてしまうけれど,この論文では「身体」が果たす役割について論じていて,そういう点からも,この論文はとても貴重だと思う.

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Cann et al. (2010)

1月 20, 2014 コメントは受け付けていません

Cann, A., Calhoun, L. G., Tedeschi, R. G., Kilmer, R. P., Gil-Rivas, V., Vishnevsky, T., & Danhauer, S. C. (2010). The Core Beliefs Inventory: A brief measure of disruption in the assumptive world. Anxiety, Stress, & Coping, 23, 19-34. doi: 10.1080/10615800802573013

これは,テデスキ先生とカルホーン先生を含むノースカロライナ大学シャーロット校のPTG研究室メンバーの論文.PTGがどんなふうにして起きるのかを説明した理論モデルでは,出来事が起きるまでに自分が信じてきたたくさんのことが激しく揺さぶられ,自分の人生や人間関係などいろいろなことを問い直さざるを得ないような経験をすることが,PTGにとって大きな影響を与えると説明されている.この「自分が信じてきたことが揺さぶられる」という経験の,「揺さぶられ度合い」を測定することはとても難しく,議論は今も続いている.自分が信じてきたことそのものについて測定する尺度は,World Assumptions Questionnaire (WAQ)やWorld Assumptions Scale (WAS)をはじめとしていくつかあるけれど,そこに示されているような信念がどれくらい揺さぶられたか,問い直されたか,を問う尺度はこれまでなかった.なので,その一歩としてArnieが中心となって作成したのが,この「Core Beliefs Inventory(CBI:中核的信念尺度)」になる.この論文では,3つの調査を使って,CBIの信頼性及び妥当性を検討した結果がまとめられている.私たちは去年この尺度の日本語版を作り,データを取ったので,それを今年のAPAで発表する予定になっている.

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出版物

11月 4, 2013 コメントは受け付けていません

Phelps, McCammon, Wuensch, & Golden (2009)

11月 3, 2013 コメントは受け付けていません

Phelps, K. W., McCammon, S. L., Wuensch, K. L., & Golden, J. A. (2009). Enrichment, stress, and growth from parenting an individual with an autism spectrum disorder. Journal of Intellectual & Developmental Disability, 34, 133-141. doi: 10.1080/13668250902845236

PTGの研究は,文字通り,「トラウマ」を経験せざるを得なかった人たちを対象として積み上げられてきたけれど,ここ数年はそれを他の対象にも応用できないだろうかという観点から,狭義の「トラウマ」を必ずしも経験していない人たちのPTGが多く研究されている.それには,「トラウマ」とは呼ばないけれど「非常にストレス」な出来事(例えば受験の失敗や失恋)を経験した人たちを対象とした研究もあれば,看護士や社会福祉士,医師,臨床心理士,救急救命士など心身の健康にかかわる専門職についている人たちを対象とした研究もある.そして,そのような応用例の一つが,この論文にあるような,発達障害を抱えた子どものお父さんやお母さんにみられる成長だ.この領域の論文はまだ数が少ない.この論文の著者が言っているように,発達に問題を抱えた子どもの療育に関してはその大変さが特にクローズアップされてきたという歴史があるからだと思う.けれど,それにもまして,この領域の研究の難しいところは,「子どもとの毎日のなかで,自分自身が成長させられている」との実感がなぜもたらされるのかを,理論的にどう説明するかが難しいところにあるように思う.認知プロセスを強調した今のPTGモデルでは説明されえない要因がたくさんある.この論文の著者は,「自分の子どもが,他の多くの子どもたちがたどるような典型的な発達の道筋と違う」ということに気づいて,はっとすることが,PTG理論で説明されているような,認知機能を突き動かすきっかけになり得ると仮定して,この研究を行っているようだ.

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Osei-Bonsu, Weaver, Eisen, & Vander Wal (2012)

10月 30, 2013 コメントは受け付けていません

Osei-Bonsu, P. E., Weaver, T. L., Eisen, S. V., & Vander Wal, J. S. (2012). Posttraumatic Growth Inventory: Factor structure in the context of DSM-IV traumatic events. International Scholarly Research Network ISRN Psychiatry, Volume 2012, Article ID 937582. doi: 10.5402/2012/937582

最近の,PTGI(心的外傷後成長尺度)を用いた研究の傾向は,21項目の合計点(0-105)を使ってPTGをひとくくりにするのではなく,下位尺度つまり5つの領域ごとに,そのメカニズムをより詳細にみていこうというものだと思う.例えば,大学受験や資格試験への失敗といった,自分の関与が大きい出来事からは,「人間としての強さ」や「新たな可能性」に関するPTGが報告される傾向が高い.一方で,命や体に直接関係するような出来事からは,「人生に対する感謝」にまつわるPTGが報告される傾向が高い.そして,苦悩を伴う出来事を経験して,「自分には強い面があると思うようになった」との実感に代表される成長と「これまで当たり前だと思っていた日常のささいなことにも感謝するようになった」という成長は,本来性質が違うものだと言える.なので,PTGI21項目の合計点を従属変数にすえた研究をするということは,こういったいろいろな性質を持つPTGを全部ひっくるめてとらえることになるので,合計点はキープするとしても,下位尺度得点も見ていこうという考えが主流だと思う.そんななかで,この論文が発表された.この論文は一言で言うと,いろいろデータを分析した結果,因子構造はどれもしっくりこないので,合計点を使うのがいいのではないでしょうか,そしてそれが嫌ならばPTGIを改良して,ちゃんとそれぞれの因子に同じ項目数が行き渡るようにしてくださいというものだ.

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Cann, Calhoun, Tedeschi, Taku., … Dauhauer (2010)

8月 17, 2013 コメントは受け付けていません

Cann, A., Calhoun, L. G., Tedeschi, R. G., Taku, K., Vishnevsky, T., Triplett, K. N., & Danhauer, S. C. (2010). A short form of the Posttraumatic Growth Inventory. Anxiety, Stress, & Coping, 12, 127-137. doi: 10.1080/10615800903094273

ここ最近,PTGI(心的外傷後成長尺度)の短縮版であるPTGI-SFについての問い合わせが少しずつ増えているので,短縮版を発表した論文をレビューしておこうと思う.この論文は,私がノースカロライナ大学での研究生活を終えて,ミシガンのオークランド大学に赴任した最初の仕事だったので,よく印象に残っている.PTGIは21項目からなるので,項目数がそこまで多すぎるということはないと思うけれど,当時,私たちの研究グループに所属していた大学院生の何人かが深刻なトラウマを経験された方々を対象にインタビューによる研究を始めていたので,項目数を可能な限り減らしたいという思いはあった.そこで,この論文の第一著者であるDr. Cannが中心となって,これまでに収集したすべてのPTGIデータを一つにまとめ,項目を取捨選択し,新たに調査を行い,短縮版を作って発表した.私の担当部分は主にデータ分析(確認的因子分析等)だった.

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Rose, Endo, Windschitl, & Suis (2008)

7月 18, 2013 コメントは受け付けていません

Rose, J. P., Endo, Y., Windschitl, P. D., & Suis, J. (2008). Cultural differences in unrealistic optimism and pessimism: The role of egocentrism and direct versus indirect comparison measures. Personality and Social Psychology Bulletin, 34, 1236-1248. doi: 10.1177/0146167208319764

PTGを説明しようとする研究では,きっかけとなった出来事の特性(出来事からの経過期間,出来事が直接命にかかわることだったかどうかなど),出来事をどうとらえたかという主観的な認知,そこから生じたストレス反応を軽減するためにどうしたかという対処方略,自分に起きた出来事をどのように意味づけたかなどの熟考や反芻など,出来事が起こった後に関係する変数がPTGの予測子として数多く取り上げられているが,その一方で無視できないのは,出来事が生じる前から既に存在している個人差だ.

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Groleau, Calhoun, Cann, & Tedeschi (in press)

7月 14, 2013 コメントは受け付けていません

Groleau, J. M., Calhoun, L. G., Cann, A., & Tedeschi, R. G. (in press). The role of centrality of events in posttraumatic distress and posttraumatic growth. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy. doi: 10.1037/a0028809

6月のPTG&レジリエンス研究会で得たさらなる収穫は,「記憶」特に「自伝的記憶」という研究領域とPTGの関連だと思う.日本に一時帰国する直前の5月頭にMPA (Midwestern Psychological Association)という学会がシカゴであり,研究室のメンバーと参加し,私たちも3つの研究成果を発表した.その時にオハイオ州のMiami Universityから大学院生が何人が参加していて,彼らが”event centrality(出来事の中心性)”とPTGの関連について発表していた.それまで,UNC Charlotteのテデスキー先生たちから,Event Centralityという概念が注目されていて,自分たちもある調査で導入したとは聞いていたけれど,実際に勉強したことがなかったので,そのMPAの発表はとても新鮮だった.そして日本に一時帰国し,PTG&レジリエンス研究会の場で自伝的推論が御専門の認知心理学の先生と出会い,さまざまな概念(自伝的記憶,自伝的推論,出来事の中心性,想起時点での自己,自己定義的記憶などなど)について勉強させてもらうなかで,私の頭の中も,これまでまったく考えたことがなかった方向からPTGを見るチャンスとなり,整理されつつあるような感じがした.そしたらいいタイミングで,テデスキー先生たちから,この論文が「アクセプトされた」と連絡がきた. 続きを読む…

Tomich & Helgeson (2012)

6月 23, 2013 コメントは受け付けていません

Tomich, P. L., & Helgeson, V. S. (2012). Posttraumatic growth following cancer: Links to quality of life. Journal of Traumatic Stress, 25, 567-573. doi: 10.1002/jts.21738

PTGに関する研究が「研究のための研究」に陥る危険性と常に隣り合わせになっており,研究の意義が問われ続ける理由には,PTGそのものが介入の目標になりえないという点が挙げられる.それはDrs. Tedeschi & Calhounの論文の中でも繰り返し述べられているし,先のPTG&レジリエンス第3回研究会でも議論されたことである.この論文の著者もまた,アブストラクトを,「Clinicians should consider the notion that more growth may sometimes, but not always, be better」という一文で結んでいる.本研究は,がんの診断を受けた患者を対象に,PTGとQOL (Quality of Life)の関係を検討したものである.PTGの関連概念であるベネフィット・ファインディング(知覚された恩恵)を測定する尺度であるBenefit Finding Scaleを用いてこれまでに多くの論文を発表してきている二人の研究者が,この調査ではPTGIを用いているところが興味深い.ただし,PTGIをそのまま用いるのではなく,彼らなりに修正したものを使用している.このあたりも,先のPTG&レジリエンス第3回研究会で議論にのぼったように,尺度を対象・目的に応じてどんどん進化させてやるというアイデアのいい例になっている.

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PTG・レジリエンス第3回研究会終了

6月 21, 2013 コメントは受け付けていません

PTG・レジリエンス第3回研究会が終わった.話題提供を引き受けてくださった先生方の話に大変引き込まれ,私は一番前の席でノートをとりまくった!もっと司会の役割を果たしたほうがよかったかもしれないし,来てくださった方々がもっとディスカッションできるような場にするためのファシリテーターとしての役割を果たしたほうがよかったかもしれないけれど,私は自分たちが今進めている研究のためのヒントが話題提供者の先生のところからどんどん出てくるので,はっきりいってそれどころではなかった.自分のノートから一番記憶に残った点だけまとめておく.

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Lykins, Segerstrom, Averill, Evans, & Kemeny (2007)

4月 8, 2013 コメントは受け付けていません

Lykins, E. L. B., Segerstrom, S. C., Averill, A. J., Evans, D. R., & Kemeny, M. E. (2007). Goal shifts following reminders of mortality: Reconciling posttraumatic growth and terror management theory. Personality and Social Psychology Bulletin, 33, 1088-1099. doi: 10.1177/0146167207303015

私の研究の大枠は,ノースカロライナ大学シャーロット校の心理学部の3人の教授,テデスキー,カルホーン,カン博士がこの15年くらい発表し続けているPTG理論モデルにのっとっている.PTG理論モデルというのは,本人にとって非常に大変でつらい出来事が起きたことをきっかけとして,PTGが生じるまでの流れを示したものである.例えば,「出来事の衝撃度がその後のPTGに影響を及ぼす」という仮説もこのモデルにのっとっているし,「起きた出来事に対して自らどう意味づけ考えたかがPTGに影響を及ぼしている」という仮説もこのモデルからうまれたものである.このモデルに対して異議を唱えている理論のひとつが,脅威処理理論ないしは脅威管理理論(Terror Management Theory: TMT)である. 続きを読む…

PTG・レジリエンス第3回研究会

3月 23, 2013 コメントは受け付けていません

現在、大きなストレスを伴うつらい出来事や経験から人が精神的に成長するという現象(Posttraumatic Growth:外傷後成長),及びその近接概念であるレジリエンス(Resilience)や恩恵(Perceived Benefit),意味づけ(Making Meaning)などについて、いろいろな方面の先生方や仲間と研究会を企画しています。これが第3回目になります.日時は6月9日(日曜日)の午後,東京都内での開催となります.詳細が決まり次第,随時,情報を更新していくために,新たなページを作りました(ここをクリックしてください).

Milam, Ritt-Olson, & Unger (2004)

3月 22, 2013 コメントは受け付けていません

Milam, J. E., Ritt-Olson, A., & Unger, J. B. (2004). Posttraumatic growth among adolescents. Journal of Adolescent Research, 19, 192-204. doi: 10.1177/0743558403258273

私の研究室では,メンバーがそれぞれ順番に自分が特に興味を持ったPTGの論文について「自分が彼らの共同研究者だったら」という目線で発表する場をもうけている.発表者以外は私も含めていろいろな質問をするんだけれど,それに発表者がどう答えるかが見所になる.昨日はちょうどその日にあたり,一人の学生がこのMilamの論文を選んで発表した.その際の私の反応は,「おお,久々にクラシックな論文」.私は名古屋大学にいた博士後期過程の時からPTGにまつわる論文を集めては,自分なりに番号をつけて整理していて,今ではその番号は653になっている.この論文の番号は「24」.すごく古い.歴史あり.名古屋大学時代にコピーしているため,名古屋大学図書館のはんこ付きで,紙もちょっと茶色い.私が渡米後に英語で論文を書き始めて最初のうちよく言われたアドバイスは,古い論文ばかり引用しないで,新しいもの,印刷中のものをどんどん入れていきなさいというものだ. 続きを読む…

Ickovics, Meade, Kershaw, Milam, Lewis, & Ethier (2006)

3月 9, 2013 コメントは受け付けていません

Ickovics, J. R., Meade, C. S., Kershaw, T. S., Milam, S., Lewis, J. B., & Ethier, K. A. (2006). Urban teens: Trauma, posttraumatic growth, and emotional distress among female adolescents. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 74, 841-850. doi: 10.1037/0022-006X.74.5.841

PTGの論文は大人が対象となっているものが多い.今,私の研究室では,日米の高校生を対象にPTG の心理教育プログラムを開発してその効果研究をしているので,高校生が対象となっているPTG論文はとても貴重な資料となる.Ickovicsらのこの論文は,高校生が対象になっているというだけでなく,他にもいくつかの点でとても興味深い.例えば,縦断研究であること,出来事が起きたタイミングによって分析していること,PTGIを高校生に分かりやすく変えていることなどだ.でもそんななかでも一番私が興味を持ったのは,PTGのきっかけとなる出来事の聞き方だ.

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Gregory & Prana (In Press)

2月 23, 2013 コメントは受け付けていません

Gregory, J. L., & Prana, H. (2013, online first publication). Posttraumatic Growth in Cote d’lvoire refugees using the companion recovery model. Traumatology. doi: 10.1177/1534765612471146

PTGは介入研究が難しい.PTGIを使って介入の効果を測定するのはもっと難しい.つらい出来事を経験した後でそこから何か恩恵や意味を見出すことができたかどうか,何か得たものがあったかどうかということとPTG,つまり人間としての成長を同じようなものだととらえるならば,何らかの介入の後で,今まで見えていなかったことに気づきを得ることは充分あると思う.というより,PTGは介入によって影響されるようなものではないということが言えてしまったらこわいし,PTGの研究者としては,介入の可能性があると信じてやっている.その上で,介入は本当に難しい.というのも,PTGはそれがなくても生きていけるようなものだと考えられているし,逆に,言葉にならないようなつらい思いを経験した人に,成長の可能性まで期待するなんて,そんな酷なことはないという見方をする人もいる.つまり,おまけのような要素が強いので,心理臨床家はそれを求めたり,ましてや成長を焦らせたりするようなことは絶対にあってはならないと言われている.そのために,PTGに直接第三者が介入できることを考えることにさえ,二の足を踏むような状況がうまれている.そんななかで,この研究者たちは,心理教育モデルを自分たちで作って,それをコートジボワールの難民の人たちに適用して,その介入の前と後でPTGIを実施し,得点の差を発表している.分析方法など問題点がいくつかある論文だけれど,介入の前後でここまで得点が変わるということのおもしろさもあってここで紹介したい. 続きを読む…

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Taku (In Press)

2月 23, 2013 コメントは受け付けていません

Taku, K. (2012, online first publication). Posttraumatic Growth in American and Japanese men: Comparing levels of growth and perceptions of indicators of growth. Psychology of Men and Masculinity. doi: 10.1037/a0029582

自分が書いた論文についてもレビューしてみようと思う.これは単著の論文.私にとって単著の論文は英文ではこれが2本目になる(1本目は,Personality and Individual Differencesに投稿した論文).アメリカの大学では,テニュア制度があり,私たちアシスタントプロフェッサーは,共同研究に加えて,単独の研究も求められる.PTG研究の中心は,どのような条件のもとでPTGが体験されるのかという道筋の解明(予測変数,媒介変数の同定)と,PTGがその後の健康行動や精神的健康にどのような影響を及ぼすのかという作用の解明,そして結局のところどのような介入がPTGにとって効果があるのかという議論に集約されるように思う.ただし,それを可能にするためにはPTGの定義や測定がどうしても不可欠なので,PTGとレジリエンスの関係やPTGとポジティブ・イルージョンの関係など,関連概念の研究もとても重要で,そういう研究が今多くなされていると思う.そういった研究は主流だからこそ,共同研究という形がいいように思うけれど,そういう研究をしながら,私自身考えているのは,PTGIを用いてPTGの研究をしたり発表をしたりすればするほど,PTGIに含まれている項目が「トラウマ後の人間としての成長」の例ですよというメッセージを送り続けることになるというジレンマだ.私は,PTGIを使い続けたとしても,使い方によってはそのメッセージを変えることができるんじゃないかと考えているし,成長の内容は人によって文化によって異なっていいことを伝えることはできると思っているので,この論文でそれを示そうとした.ちなみに,成長の内容は性別によっても異なるため,その部分をすっきりさせるために,この論文では男性のみに焦点を当てて,日本の男性が考える成長とアメリカの男性が考える成長の違いを検討した. 続きを読む…

Levine, Laufer, Hamama-Raz, Stein, & Solomon (2008)

1月 28, 2013 コメントは受け付けていません

Levine, S. Z., Laufer, A., Hamama-Raz, Y., Stein, E., & Solomon, Z. (2008). Posttraumatic Growth in Adolescence: Examining Its Components and Relationship with PTSD. Journal of Traumatic Stress, 21, 492-496. doi: 10.1002/jts.20361

PTG(外傷後成長)とPTSD症状の間の曲線的関係について検討している論文を今もう一度整理していて,そんな中でたまたまみつけた論文がこれ.少し前に,同じJournal of Traumatic Stressに2009年に発表されたKleim & Ehlersの論文をレビューしたけれど,なんとその1年前にLevineらが両者の逆U字関係についてこの論文を出していた!Kleim & Ehlersの論文はいまだに注目を浴びているのに,なぜ見落としていたんだろう.サンプル数も多いのに不思議だ.タイトルかもしれない.Kleim & Ehlersの論文はタイトルに「曲線関係」が入っていたから.でも今回この論文を読んでみて,おもしろい特徴がいくつかあることに気づいた.この論文はPTGIのヘブライ語版を使っていて,PTGIの探索的因子分析を載せている.しかも調査対象は,日本における中学生から高校1年生くらいまでの男女.思春期を対象にした研究はあまり多くないからとても参考になる.

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